ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > パクムンダム> 住民の要請に従った水門開放へ
メコン河開発メールニュース 2004年6月20日
昨年6月以来、久しぶりにタイのパクムンダム(世界銀行融資、深刻な漁業被害)のニュースです。アメリカでのダム撤去は、小規模のものが多い中で、タイのパクムンダムでは、住民たちが魚の回遊を取り戻すための水門開放という「事実上の」ダムの無力化を求めて運動を続けています。水門開放のタイミングや期間をめぐって今も住民たちの闘いが続いています。
これまでの経緯については
をご覧下さい。
以下、メコン・ウォッチの木口由香の解説と翻訳です。
タイ政府は、2002年に自ら命じたウボンラチャタニ大学の調査を無視して4か月の水門開放を決めましたが、今年5月に住民が行った要請に従い、水門開放期間を変更することを閣議で了承しました。
ウボンラチャタニ大学の調査では、年間4か月開放ではなく5年間の試験的な通年開放が進言されたのですが、政府の委員会がそれを無視して一方的に4か月開放を通告したという経緯があります。
2002年の住民とタイのNGO東南アジア河川ネットワークの調査でも、メコン・ウォッチの昨年の調査でもムン川ではほぼ通年魚の回遊が見られることが分かっています(流域住民の知見による魚の回遊に関する調査)。
2003年には7月から10月までの水門開放が行われましたが、記録的な少雨の年とも重なって、ムン川へのメコンの魚の回遊はあまり見られなかったといいます。
住民の漁業も不振で、多くの人が漁を諦めて村を離れました。昨年の経験から、今年に入って多くの村人から「通年開放が無理ならば、魚の回遊期間にあった期間の前倒しを」という声が出ていました。
今年、現地では先月から大きな魚の回遊が始まっており、ダムを上がれない魚が下流に溜まっているのが住民によって観察されています。住民にとっては好ましい決定です。しかし関係者は、間近に迫る国政選挙や民営化を迫られるタイ発電公社の勢力低下など、様々な要素が決定に絡んでいると見ており、今後の流れは予断を許さないようです。
8日、首相府付き広報官サンサニー・ナークポンは首相府で、エネルギー省とタイ発電公社(EGAT)から要請があったパクムンダム水門開放期間の変更が閣議で了承されたと発表した。以前の決定による開放期間は、7月1日から10月31日までであったが、今後は5月1日から8月31日となる。
サンサニー広報官の発表は以下の通り。
エネルギー省によるとEGATは住民の「ムン川の生活とコミュニティ回復委員会」からダムの水門開放の時期を5−8月に変更するよう要請されていた。EGATは、これについてウボンラチャタニ大学の研究者とウボンラチャタニ県と会合を開き、同大学による水産生態の研究を検討した。結果、メコン河からムン川への水棲生物の回遊は5月にピークを迎え、8月には逆にメコンに戻っていく。そのため、漁業としてメリットのあるのはこの4ヶ月であり7月1日から10月31日よりも良い(ことが分かった)。また、生簀養殖漁民にも(水位低下の)影響はなく、(灌漑用水を使うとされる)農民にも影響はない。エネルギー省は、水門開放期間の変更が住民生活に悪影響が出ず、コミュニティの必要に応じたものだと見ている。