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メコン河開発メールニュース 2005年11月3日
カンボジアの違法伐採の問題や森林セクターにおける世界銀行の関与については、メコン・ウォッチのメコン河開発メールニュースでお知らせしてきましたが、2005年10月、森林伐採権の管理計画に関する新たな外部レビューの結果が公に出されました。
以下、メコン・ウォッチの後藤歩による背景の解説と、外部レビューを行ったイギリスのNGOグローバル・ウィットネスのプレスリリースの翻訳です。
この調査は、2000年以来行われてきたドナーによる4度目の委託調査であり、世界銀行の委託によって行われました。注目すべきは、最新のレビュー結果も、現在の森林伐採権を存続させるべきではないという、これまでの委託調査の結果と同じ勧告を行っていることです。世界銀行がこの調査結果を踏まえて、今後カンボジア政府へ行う勧告がどのようなものになるのかを注視していく必要があります。
しかし、最新の情報によれば、世界銀行は今月半ば、問題視されている伐採企業に伐採権を与えることをカンボジア政府へ勧告する、とNGOとの会合で発表しました。これは外部レビューの結果を完全に無視しているとともに、世界銀行によるこれまでの伐採権承認がインスペクションパネルによる調査の対象となっていることを考えれば、パネル調査中にさらなる不遵守の可能性を重ねることで調査の意味を損なうことにつながります。世界銀行の動きに関して最新の情報が入り次第、またお伝えします。
グローバル・ウィットネス緊急プレスリリース
2005年10月10日
世界銀行のプロジェクトにより承認されたカンボジアの森林伐採権に対する外部調査は、伐採権のいずれも商業的伐採に関する今後の計画を進める許可を与えられるべきではない、という結論を下した。世界銀行自身によって委託されたこの調査は、2000年以来行われている、ドナーの資金による伐採権に関する調査の4度目のものである。同調査は、伐採権システムは構造的に欠陥があり、違法業者により乱用されているため早急に終了する必要がある、というグローバル・ウィットネスが10年近くしてきた主張をさらに裏付けるものになった。
グローバル・ウィットネスのJon Buckrell氏はこう述べる。「注目すべきは、調査の結果よりも、同じ、明らかな結論を何度も繰り返すために必要とされた調査の数である」。「カンボジア政府および援助パートナーは、一体いつになったらコスト高の調査を委託するという行為から、調査結果を踏まえた行動に移るのだろうか?」。
世界銀行のカンボジアにおける頑固な伐採権推進は自らのセーフガード政策に違反しており、この結果インスペクションパネル(訳者注:世界銀行の政策違反を審査する査閲委員会)への申立が「森林伐採権管理・規制パイロットプロジェクト」(FCMCPP)に対して行われた。インスペクションパネルは、来年始めに調査結果を発表するはずである。グローバル・ウィットネスは、コンゴやリベリアなど紛争後の国々でカンボジアの失敗が繰り返されないために、世界銀行に対して全ての森林プログラムを見直すように促している。
カンボジアの森林セクター改革のプロセスにおける行き詰まりは、アイデアの欠如というよりはむしろ、意思の欠如による。2004年、カンボジア政府および世界銀行、FAO、DFID(英国の国際開発省)、DANIDA(デンマーク国際開発援助活動)を含む援助機関は、カンボジアにおける森林管理改革の青写真をつくるため、独立の森林セクター調査(IFSR)の委託を行った。その結果、コミューン(訳者注:カンボジアの地方自治の区分には州、郡、コミューン、自然村、がある)を基礎とした管理とコミュニティの更なる参加に基づいた「パートナーシップ森林システム」を伐採権の代わりに行うべきだ、と提言した。(現在の)カンボジア政府と援助機関による(IFSRの)提言の実施は、今のところ無視できるほどでしかない。
「腐敗したエリート層を潤おしている現在の中央集権的な伐採のパラダイムを終結することは、森林保全のためだけでなく、カンボジアの農村の人びとにとって決定的に重要である」。「失われた過去10年の後、ドナーやカンボジア政府関係者がこの最新のレビュー結果をさらなる本棚の肥やしにするのではなく、本質的な変化の触媒とすることが極めて重要なのだ」、Jon Buckrell氏は述べた。
さらに詳しい情報は、Mike Davis: mdavis@globalwitness.org、+44 207 2726731まで。
【引用されている文書について】