ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > タイ・ゲンコイ第2複合火力発電所>住民が工事許可取消を求めて提訴
メコン河開発メールニュース 2006年3月16日
政府系金融機関の統廃合の一環として解体がほぼ決まった国際協力銀行(JBIC)。そのJBIC(国際金融業務)が、2005年11月に住民の声を無視して融資決定をした、タイのゲンコイ2複合火力発電所に関する続報です。
以下、メコン・ウォッチの土井利幸の解説と、現地のタイ字紙の翻訳記事です。
タイ中部サラブリ県のゲンコイ第2複合火力発電所建設工事は、地元住民の同意なしに、建設反対の声を完全に無視する形で進行しています。
発電所本体の建設に加えて、この事業には、燃料となる天然ガスを送るガス・パイプラインの敷設、送電線の増強、冷却・洗浄水を投棄先の川まで送る排水管の敷設など、住民生活に大きな影響を及ぼす懸案がいくつか残されています。
このうち、排水管の敷設場所に当たる幹線道路沿線の住民30名が、タイ中央行政裁判所に対して工事差止めの訴えをおこしました(2006年2月現在)。住民は事業者から十分な説明を受けておらず、排水管敷設に同意していないにも関わらず、敷設現場が幹線道路沿線ということでサラブリ県の県知事が独断で工事に同意してしまいました。
実はこの土地は30年ほど前に幹線道路建設の目的で地元住民が公共の利用のために提供したもので、住民の中には現在も土地権を保持している人びとがおり、営利活動のための工事が勝手に行われることは許せないと主張しています。
今年1月には、この沿線住民たちが、敷設工事を強行しようとする下請け企業に対して、横断幕を立てて工事を阻止するなどの抗議行動を行いました。この模様は地元タイ語紙でも取上げられています(以下の記事翻訳参照)。
住民が求める行政裁判所の工事差止め判断はまだ下っておらず、そのため住民は行政裁判所の「訴え受理証」を現場に掲示し、これをたてに工事をやめさせようと奮闘していますが、下請け企業はこれを無視して着々と工事を進めています。住居の目と鼻の先で地面が掘返されて汚水が噴出し、大重量のパワーショベルが幹線道路を踏みつけるたびに、工事を見守る沿線住民は不安と不満をつのらせています。ゲンコイ第2複合火力発電所については、以下をあわせてご覧下さい。
カオソット紙(原文タイ語)
仏暦2549(2006)年1月29日(日)
1月28日午前10時、サラブリ県ゲンコイ郡の住民が共同で、サラブリ−ヒンソーイ幹線道路沿いの同郡ソンコーン地区第5村にテントを設営した。これは、同郡バンパー地区にガルフパワージェネレーション社の火力発電所が建設され、排水管敷設工事でサラブリ−ヒンソーイ幹線沿いの土地が掘りかえされ住民にどのような被害をもたらしているかを、一致結束して一般住民に知らせる目的がある。住民たちは、行政裁判所が掘起こしの中止を告げた命令書の写しもあわせて掲示した。【訳注1】この火力発電所は、南部プラチュアップキリカン県ボーノーク−ヒンクルートから移転してきたものである。【訳注2】
サラブリ−ヒンソーイ幹線道路沿いの第1村39/1番に住むプラウェート・サノピン氏(58歳)は、中央行政裁判所が訴えを受理したと述べた書類の写しを掲示し、「ガルフパワージェネレーション社が排水管敷設のために地面を掘返し、公共地に損害を与えた。住民に被害が出て、土地に対する権利が侵害された」と語った。1月27日、中央裁判所は新たな命令が発せられるまで一時的にこの工事を中止するよう命令を出した。
また、同郡タオプーン地区とソンコーン地区の住民も、協力してゲンコイ第2火力発電所の排水管を敷設させない旨を宣言した。これは、この土地が、約30年前にゲンコイ郡内での移動を容易にする目的でサラブリ−ヒンソーン幹線道路を建設するために住民が寄付したものであり、それにもかかわらず、今日、ガルフ社が営利目的で火力発電所の排水管を敷設するために地面を掘起こし、地元住民に甚大な被害をもたらしているからである。
【訳注1】行政裁判所が発行したのは、住民の訴えを受理したという書類で、裁判所の判断は現時点ではまだ下されていない。第2段落の「工事を中止するよう命令を出した」の部分についても同様。
【訳注2】「南部プラチュアップキリカン県ボーノーク−ヒンクルート」は、タイ南部プラチュアップキリカン県に一時建設が予定された「ボーノーク」と「ヒンクルート」の二つの石炭火力発電所のこと。地元の反対運動とタイ政府の決定により建設地と燃料が変更され、二つの発電所のうち、ボーノーク発電所がゲンコイに移転し、ゲンコイ第2複合火力発電所となった。ボーノークとヒンクルート両発電所に関しては、以下を参照のこと。