ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ビルマ(ミャンマー)>政府がイラワディ川ミッソンダムを凍結 「中国側に正式な工事中止を求める」と環境団体
メコン河開発メールニュース2011年10月7日
ビルマ(ミャンマー)のカチン州を流れるイラワディ(エーヤワディ)川で、ビルマ政府と中国国営の中国電力投資公司(CPI)などが共同で建設を進めているミッソンダムについてのニュースです。
同ダムについては、その位置や規模の大きさから深刻な社会・環境影響が見込まれるにも関わらず、包括的な影響調査が行われていないこと、周辺住民約1万人が移転を余儀なくされることなど、さまざまな問題が指摘されていました。また、この数カ月はビルマ国内で建設反対運動が盛り上がり、8月23日付のメールニュースでもお伝えした通り、民主化運動指導者アウンサンスーチー氏も、同ダム建設について正式に懸念を表明していました。
そんな中、ビルマのテインセイン大統領は9月30日、「任期中[2015年いっぱい]はミッソンダムの建設を中断する」という提案を議会に提出しました。建設が国民から支持を得ていないというのが表向きの理由です。ただし、実際に工事が止まるのか現時点では明らかではありません。これに関連して、ビルマ河川ネットワーク(BRN)のプレスリリースをご紹介します。
ビルマ河川ネットワーク
2011年9月30日
ビルマ河川ネットワークは、テインセイン大統領がイラワディ川ミッソンダムの建設を止める計画だという報道を歓迎する。しかしビルマ国民は、ミッソンダム建設プロジェクトの所有者である中国電力投資公司(CPI)が正式にプロジェクトの中止を宣言し、建設現場から作業員や機材などをすべて引き揚げることを求めるべきである。また、イラワディ川源流に計画されているミッソン以外の6つの大型ダム建設も直ちに中止するよう、軍事政府とCPIへの圧力をかけ続ける必要がある。それらもミッソンダムと同様、ビルマにとって非常に重大な悪影響を及ぼす。
ミッソンダムが本当に中止されるなら、ビルマ国民、中でもミッソンダム建設についてビルマ国軍に抵抗し、協力を拒んだ勇敢な周辺住民にとって、大きな勝利となるだろう。
しかしミッソンダム建設現場は現在、CPIが管理しており、建設が本当に中断されるかはCPIの行動にかかっている。CPIは建設を中止することを正式に発表し、工事現場を閉鎖しなければならない。もっとも重要なこととして、移転村に強制的に移転させられた住民が元の家に戻るのが認められなければならない。
ビルマ河川ネットワークのアーナン氏はこう述べる。「中国側がミッソンダム建設の中止を公に発表し、工事現場から撤退しない限り、われわれは建設が進むものと理解しなければならない」
ミッソンダム建設が中止になったとしても、ビルマ河川ネットワークはイラワディ川源流に計画されているすべての水力ダム建設を阻止する運動を続ける予定だ。
ミッソンダム以外の6つのダムも、生産される電力は中国に輸出される。またミッ
ソンダムと同様、取り返しのつかない環境破壊や、予測不可能な水位の変動、川に頼って生計を建てる数百万の住民への社会・経済的被害をもたらす。さらに、カチン民族の住民数千人が移転を強制されるだろう。
(出典:Burma Rivers Network, “Burma Rivers Network demands official cancellation by China Power Investment of not only Myitsone but all seven Irrawaddy dams,” September 30, 2011.)
【参考資料】
イラワディ川ダム開発(メコン・ウォッチ)
(文責・翻訳 秋元由紀/メコン・ウォッチ)