ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > タイ原発>日本の野田佳彦首相とアジア各国首脳への公開書簡
メコン河開発メールニュース2012年3月11日
3月10日、東北タイのウボンラチャタニ県で原子力発電所建設計画に反対する市民の集会が開催されました。タイでは現状5か所の候補地が検討されており、ウボンラチャタニ県はそのうちの一つです。同県の原発建設予定地は、1960年代に日本の援助で建設されたシリントンダムの貯水池周辺です。このダムはタイが軍事政権下にあった時代に作られ、住民は不十分な補償しか受けられず半強制的に移転させられたことが知られています。この問題が明らかになったのは、1990年代後半の憲法改正時。自分たちに正当な補償を要求する権利があると気づいた住民たちが、30年後に再補償の運動を起こしたからです。
その後再補償は実現しましたが、影響住民は、再び巨大開発事業に翻弄されています。以下は現地から送られてきた、日本政府とアジア各国首脳にあてられた書簡の翻訳です。
公開書簡
原子力発電に反対する市民ネットワークより
日本の野田佳彦首相とアジア各国首脳へ
日本の福島第一原子力発電所での爆発事故から1年が経過しました。
事故は農地や牧場だけでなく、地域の経済と社会をも瓦解させてしまいました。日本政府はこの状況に対して未だに、責任を取ることも解決することもできないでいます。
これは、原子力技術の管理が信頼に足るものではないことを示しています。現状は、関連政府機関のいう「原子力はクリーンなエネルギー」という宣伝が真実ではない明確な証拠です。
一方で、原子力の影響は国境を越え、汚染は何十年も続いてゆきます。日本の危機においては、原発から半径20kmが少なくとも10年にわたり、立ち入り禁止となる恐れがあります。また、25年前のチェルノブイリの事故では、環境だけでなく、世界の未来を支える子供たちを含む市民の健康に対し、今後何十年も影響が続くことが懸念されています。これは、原子力発電所からの放射能の広がりが人類の生存にとって脅威だということをも示しているのです。
原子力発電所はいらないタイ人のネットワーク(ウボンラチャタニ県)は、日本政府と他のアジア諸国政府に次のように要請・意見表明をいたします。
1.日本政府と東京電力が、影響を受けた地域の人びとに正当な補償を支払うこと。
2.放射能に汚染された地域を元の環境に戻し居住可能とするため、日本政府が最大限の努力をすること。
3.日本の全ての原発を廃炉にすること。また、新規建設を中止し、莫大な被害をもたらす同様の事故が繰り返されるのを防ぐため、原子炉の寿命延長を直ちに止めること。
4.日本にとって一番ふさわしくない事実は、福島の事故の収束に問題を抱えながらも、他国に原子力技術を輸出する国であるという点です。2010年に設立された「国際原子力開発株式会社」を解散すべきです。そして原子力技術輸出に関わりをもたない、と明言してください。
5.アジアにある全ての原発の廃止を要請します。
6.アジア地域での全ての原発建設に反対します。
7.原子力のないアジアの実現のため、タイ人の皆さん、協力合って原子力のない社会を築きましょう!
於ウボンラチャタニ県トゥンシームアン 2012年3月10日
原子力発電所はいらないタイ人のネットワーク(ウボンラチャタニ県)記
(文責・翻訳 木口由香/メコン・ウォッチ)