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メコン河開発メールニュース2012年7月2日
カンボジア北東部には、セサン、スレポック、セコンという3つのメコン河の支流が流れています。3河川の流域はメコン河最大の支流水系で、それぞれの源流はラオスやベトナムに位置しています。また、カンボジアの先住・少数民族人口の大部分がこの3河川流域に集中しています。セサン川やスレポック川では上流のベトナムでダム開発が進み、下流のカンボジアで甚大な被害を出しています。詳しくはこちらをご覧ください。
昨年からお伝えしているように、セサン川河口付近にセサン下流ダムを建設する計画が動き始めています。
地域住民は社会的立場の弱い少数民族が大多数を占めています。また、現在も上流のベトナムのダム開発に苦しめられているにも関わらず、正当な補償も受けられない状です。セサン下流2ダムの建設は今でも困難な暮らしを送る人々に、更に土地の収用や移転を強いることになります。
少し前のことになりますが、カンボジアのストゥントレン州とラタナキリ州の住民がセサン下流2ダムに反対し地元で行動を起こした様子を伝える報道を、翻訳でお届けします。
2012年2月28日 Radio Free Asia
「Hundreds Protest Dam Plans」
(2012年2月)28日、カンボジア北東部の川沿いに住む少数民族500人以上が、ベトナムによる水力発電ダム建設により先祖代々暮らしている土地から立ち退きを迫られていることに抗議する平和的デモを行った。
ストゥントレン州とラタナキリ州を流れるセサン川沿いに暮らす村人たちは、ダム建設反対を訴えるのぼりを掲げて船に乗り込み、州都ストゥントレン市から約25km上流に位置するセサン下流2水力発電ダムの建設予定地まで行進した。
村人は地域の精霊を称えるために額や腰に赤い布を巻き、ベトナム電力公社が進める816百万USドル規模のダムプロジェクトから川の生態系を守ってくれるよう祈った。
村人はまた、「我々の生活そのものである川を守らなければならない」と書かれたのぼりを掲げて歩いた。セサン川はメコン河の支流のひとつである。
村人の代表者、Siek Mekong氏は、ダム建設は少数民族である村人たちに流域からの立ち退きを強制し、人々から農地や先祖の墓地、森を奪うことになるとRFAに訴えた。
「我々は、郡や政府に、ダム建設の計画を中止するように訴えている」と彼は言う。そして、村人は補償金や移転に伴う家などの財産補償は受け取らないとも言った。
「例え政府が補償を約束したとしても、我々は、(移転に対する)補償が欲しいわけではない。」
デモの最中、郡は村の代表者と話し合いを持ったが、ダムプロジェクトについての合意には至らなかった。
Sre Kor郡コミューンの副代表Beng Teng氏によると、郡はダム建設に対する村人によるデモを禁止すると言ったが、村人の代表が平和的なデモを行うことを約束したため容認した。
「警察は、デモを中止しないと軍隊を出動させて村人たちを取り締まる、と電話をしてきた。しかし村人は何も間違ったことはしていない。彼らはただ自分たちの精霊に祈っただけだ」と彼は話した。
「村人は私に投票してくれた。だから私は人びとを守らないといけない」
州知事のLoy Poshat氏はダム建設の現状についてコメントを避けた。一方、本プロジェクトに許可を出した鉱工業・エネルギー省は、カンボジア政府がまだダム建設計画について最終的な合意には至っていないと発表した。
2007年、カンボジアの鉱工業・エネルギー省とベトナム電力公社は、環境影響評価と実現可能性調査を含むセサン下流2ダムに関する覚書を結んだ。
2011年1月、ベトナム計画投資省はベトナム電力公社に本プロジェクトへの投資を許可した。
このプロジェクトは、ベトナム電力公社の子会社EVNインターナショナルが51%を出資し、カンボジアロイヤルグループが49% を出資する合弁会社、カンボジア−ベトナム水力発電会社が実施している。
この400メガワット級のダム建設のための用地準備は、2011年に開始された。プロジェクトを批判者たちは、国内の送電系統無しではこのダムの電力をカンボジアで活用することはできず、ほとんどの電力をベトナムへ輸出することになるだろうと言う。
このデモを取材し、ダム建設予定地を訪問したRFAのレポーターによると、ダムの貯水池のために既に何百ヘクタールもの森が伐採されている。レポーターが訪れたときには3台のブルドーザーが整地作業をし、伐採した木々が燃やされていた。
その多くが少数民族である2,000人もの人々が、プロジェクトの影響で移転を迫られている。また環境活動家は、ダムによって魚の回遊が妨げられ、80,000人近い人が魚へのアクセスを失うといわれている。
Ratha Sok によるRFA's Khmer serviceレポート。英訳 Samean Yun. 校正 Joshua Lipes
(文責 木口由香/メコン・ウォッチ、翻訳 高橋布美子/メコン・ウォッチ)