ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > 原発輸出 > 日本政府への抗議文送付、その後の顛末3
メコン河開発メールニュース2012年9月24日
5月28日のメコン開発メールニュースで、古文書研究を行うハンノム研究院のスタッフであり、ベトナムの古典音楽史研究者として著名なグエン・スアン・ジエン氏が、人気のある自身のブログに日本政府向けに原発輸出を批判する文書を掲載し、脅しにも屈せず、それを日本政府に郵送したという情報をお伝えしました。6月13日のニュースで続報をお伝えしたように、その後、ジエン氏はハノイ市情報メディア局に呼び出しを受け夜中まで拘束されました。そして8月、その処分が正式に下されました。
前回お伝えしたように、ジエン氏の処罰の直接の原因は明らかではありませんが、ご本人のブログの記載によると、彼の事務所を訪れて乱暴を働いた人物たちは、はっきりと原発輸出に反対する日本政府向け署名のブログ記事の削除をもとめていました。今回も「社会の秩序と安全を乱した」と指摘されただけで、具体的な処罰対象の行動は明らかにされていません。
ジエン氏の処罰内容は、ご本人がブログに掲載したハノイ市情報メディア局8月6日付の書面によると、
−罰金 7,500,000,ドン(金七百五十万ドン)(訳注:約29,000円)
理由 個人の電子通信ページを利用して情報を供給し、社会の秩序と安全を乱したこと
−行為に対する警告
理由 監察、捜査において事実を申告せず、あるいは事実と異なる申告を行った。
となっています。
原文(ベトナム語)
http://anhbasam.wordpress.com/2012/08/16/1208-quyet-dinh-xu-phat-ts-nguyen-xuan-dien-cua-thanh-tra-so-4t-hn/#more-72082
(2012/08/17)
その後、ブログの読者から続々と寄付が集まり、ご本人はブログで、罰金の必要額以上が集まりそうだとコメントされています。
ベトナムでは、このように言論の自由や情報が著しく制限されている上、原発の導入の是非について、そのリスクが共有された上で社会的な議論が行われている状況にはありません。放射性廃棄物の問題や被ばく労働についての情報もほとんどありません。原発が建設された後も、たとえ、放射能汚染による被害が生じたとしても、真実は闇から闇に葬られてしまうでしょう。
日本では、福島原発事故で16万人もの方々が故郷を失い、放射能汚染の現実のリスクに、さらに多くの方々が苦しんでいる只中にあります。国民の過半が、「なるべく早く原発ゼロ」という選択をし、これを受けて、政府もエネルギー戦略に、極めて曖昧な表現ながら、原発ゼロをめざす方針を盛り込みました。
この日本政府が、一方でベトナムの原発建設に協力し、一部の日本の企業の利益のために公的資金を投入することは、国内政策にも矛盾しますし、倫理的にも到底許されるものではありません。日本が、ベトナムの持続可能な発展に協力するためにすべきことは、この麻薬のような危険な技術を押し付けることではなく、日本の悲惨な経験を伝え、エネルギーの需要管理や再生可能エネルギーの技術を伝えることでしょう。
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・原発輸出
(文責 メコン・ウォッチ)