ホーム > 追跡事業一覧 > ベトナム > ベトナムの原発開発計画と日本の原発輸出
第2原発看板(写真提供:FoE Japan)
2016年11月22日、ベトナム議会が原発計画の白紙化を決定
ベトナム政府が2011年までに発表している電力マスター・プランによると、ベトナム国内の電力需要は2005年から20年までの間で年率10%増加し続け、電力供給は逼迫するとされています。ベトナム政府は、現在、総発電量の3割以上を占める水力発電は建設可能な水域が少なくなり、火力発電は資源価格の高騰や二酸化炭素排出の問題を考慮すると増設は困難となっていると分析しています。
そのため、ベトナム政府は2010年6月、2030年までに原子力発電所を8カ所、計14基(計1500万〜1600万キロワット)建設・稼働するとした原発開発方針を承認しました。既に同国国会が承認済みの投資計画では、ニントゥアン省の2カ所に2基ずつ、計4基(計400万キロワット)が建設予定となっています。同国初の原発となる予定のフォック・ディン地区の2基はロシアへの発注が決まっています(2014年着工、2020年の稼働予定)。また残るビンハイ地区の2基は同年10月31日の日越首脳会談で日本へ発注されることが決まりました。
日本政府は、パッケージインフラ輸出の一環としてベトナムへの原発輸出を強力に推進してきました。
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タイアンの海(写真提供:FoE Japan)
2011年3月の福島第一原発事故後も、ベトナム、日本政府共に計画変更の動きはありませんでした。ベトナム政府は、ベトナ ムで建設予定の原発は全てが自動で制御される第三世代であり、国際原子力機構(IAEA)によって査定された安全な施設であるとアピールしています。また、建設予定地のニントゥアン省は、地震がほとんどない地域で、津波やその他の自然災害に対して万全の施策を講じる、とも主張しています。日本政府も、新興国から要請があれば日本の「安全」な原子力技術を提供する用意がある、としています。
このような日本の原発輸出政策には市民から強い反発があります。2011年10月末「原発いらない全国の女たちアクション」はベトナムへの原発輸出方針の転換、実施中の実行可能性調査の打ち切りなどを求める署名をたった一日で6600筆以上集め、枝野幸男経済産業相らに提出しています。メコン・ウォッチも2011年11月、国際環境NGO FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)と共同で、ベトナム、ヨルダンにおける1)放射性廃棄物の処理、2)避難計画、3)代替案の検討、4)住民への説明などの状況について日本政府に質問しました。政府は「原発計画に対しては当該国が責任をもって検討・立案する」とのみ回答しましたが、具体的な事項については説明することができませんでした。ベトナムの原発に対しては、日本は、「低利かつ優遇的な融資」を提供することとなっています(2010年10月日越合意)。これは政府系金融機関の国際協力銀行の融資が想定されます。日本政府が原発建設を公的資金で支援するのであれば、当然その説明責任を負います。しかし、日本政府はその責任を果たしていません。
福島原発事故が起きたその年、多くの人々が被ばくの不安と恐怖に苦しめられている只中の2011年12月9日、第179回国会で、ベトナム、ヨルダン、ロシア、韓国との原子力協定が承認され、原発輸出に向けた重要な動きとなりました。原発輸出の是非に関する議論は尽くされないままです。メコン・ウォッチなどのNGOはこの原子力協定批准阻止に向け総力を結集し、多くの市民が議員に賛成票を投じないように呼びかけました。これに応じて、与党でも欠席・棄権をした議員がでましたが、力及びませんでした。
私たちは引き続き、この事業にこれ以上公的資金が投入されないよう、監視を強めていきます。
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建設予定地近くの村にて(写真提供:FoE Japan)
・原子力発電所が内在している事故のリスク
・日本で解決されてない問題の輸出
放射性廃棄物、特に使用済み燃料の処理問題
・税金投与の正当性
一部の企業への利益誘導
・ベトナムの社会状況に起因する問題
民主的な議論 情報公開の不足
地元の住民、少数民族は情報アクセスが困難
施工・運転リスク
汚職・腐敗・ガバナンス
・日本のエネルギー大量消費の構造の輸出
2010年10月31日、グエン・タン・ズン首相と菅直人首相がハノイ市で会談し、ベトナム中部のニントゥアン省ビンハイ地区で計画されている原子力発電所第2基の建設について、日本を戦略パートナーとすることを発表しました。報道によると、事業規模は約1兆円と見積もられています。
続いて、日本原子力発電(以下、原電)は2011年2月にベトナム電力公社(EVN)との間で原子力発電導入に関する協力協定を結びました。当初の計画によると、2011年度中に事業化調査の請負契約を締結し、その後1年から1年半程度かけて調査を行い、建設候補地の地盤調査、環境影響調査の結果のほか、必要な発電容量の試算、原子炉のタイプの選択肢なども提示するとされています(同社プレスリリース「ベトナム電力公社との原子力発電導入に関する協力協定の締結について」 2011年2月16日)。なお、この協定には 2010年10月に設立された官民協力組織「国際原子力開発株式会社(JINED)」(注1)が参加しており、報道によれば、建設・運転・保守に関する詳細な検討を進める上で、中核的役割を担うことになっています。
注1:JINEDの参加団体は、電力9社(東京電力、関西電力、中部電力、北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力)、メーカー3社(三菱重工業、日立製作所、東芝)及び産業革新機構。
同年3月11日の東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所事故発生を受けて、日本側で海外への原発輸出及び技術支援の前提となる原子力協定の国会承認プロセスに遅れが生じました。5月4日に野田佳彦財務大臣(当時)とベトナムのズン首相の間で会談がもたれ、原子力協定発効へ向けて協力関係の維持が確認されましたが、2週間後の18日の国会審議では、承認見送りが決定しています。一方、両国政府間レベルでは8月11日に高橋外務副大臣(当時)とハイ副首相の間で会談がもたれ、日本によるベトナム原発建設支援が確認され、事業推進を目指した動きが継続されていました。
野田佳彦首相は9月22日、原子力安全及び核セキュリティに関する国連ハイレベル会合において、日本が今後も海外新興国等での原子力利用支援の活動を継続してゆくことを世界に表明しました。その後、9月28日には原電とベトナム電力公社との間で前述の調査事業契約が結ばれ、原子力協定の国会承認を結ぶことになりました。多くの市民やNGOなどが反対し、一部与党を含む議員が採択を欠席する中、12月9日、参議院本会議にてベトナムを含む4カ国との間の原子力協定の一括承認が採択されています。
2009年、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部政策課は「低炭素発電産業国際展開調査事業」を公募し、日本原子力発電(株)の事業が採択されていま す。この事業は、ベトナムの原発計画に関する実施可能性調査(F/S)に費やさ れ、予算は19.99億円となっています。ベトナム側のパートナー選択が遅れたた め調査事業は平成22年度(201年度)に繰り越されましたが、2011年9月には、日 本原子力発電とベトナム電力公社(EVN)の間で、原子力発電の導入可能性に ついて調査契約が締結され、現在進行中です。この事業の契約期間は1年半と なっています。