ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >カンボジア・セサン下流2>移転を迫られる村(2)「貧しい移転地に移るより、水に沈む」
メコン河開発メールニュース2015年4月2日
引き続き、カンボジアのセサン下流2ダム(LS2)についての現地の状況をお伝えします。 クバールロミア村はスレポック川に面した村で、少数民族プノン民族の多く暮らすところです。村人は、精霊信仰を守り、農業と漁や森林からの採取で、自給自足に近い生活を長年送ってきました。村人はここに住むことを、精霊とも約束していると言います。
移転を迫られる村(1)人びとの暮らし
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20150401_01.html
今、人びとはダム事業のため、その土地から引き離されようとしています。
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80歳を過ぎたという村の長老(男性)は、「LS2ダム事業を非常に心配し、失望している。以前、招待されて他のダムを見に行った。県知事は、ダムができたら村を移転しなくてはならないと言った。今の場所に住み続けられないと。私は、もし子供たちを移転させるなら、新しい場所にはあらゆる準備をしなければならない、と訴えました。良い場所が見つかるなら移転する、もし見つからなければ移転せず喜んでここで死ぬ、と告げたのです。
開発は多くの苦しみを人びとにもたらします」といいます。
村には既に、補償のための財産の計測をするチームが作業を始めています。昨年の測定の様子を、村の青年Pさんは次のように説明してくれました。
「家に書かれた赤いペンキのサインは、LS2の移転のための補償計測が終わった印です。2014年11月14日に役人がやってきて、5日間計測が行われた。印のない家は、移転を容認しなかった家です。計測に際し、村人は補償について何も内容を知らされていません。補償対象にするからと、マンゴーの木などが何本あるかと聞かれただけ。最後に書類に拇印を押すように指示され、家族の写真をとられた。でも、村人にその写しは残されていません。拇印を押した書類が、何のためのものか分からない状態で容認した人もいます。移転をしない人はダムの水に沈んでも知らないと言われましたが、移転を拒む村人はここで死ぬ覚悟でいます」。
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カンボジアでは暴力を伴う強制的な立ち退きが頻発しています。
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/evictions.html
また、カンボジア政府が適切な補償を住民に提供しなかった事業は、日本政府が関与した事例でも起きています。
カンボジア国道1号線改修事業
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/hw1-oda.html
今後、村人がどのような事態に巻き込まれるのか、予断を許さない状況です。
(文責 木口由香/メコン・ウォッチ)