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ミャンマー国軍ビジネスの要、MEHL, MECについて

メコン河開発メールニュース2021年5月13日

 

ミャンマーでは、クーデターを起こした国軍による市民の弾圧が続いています。
国軍の暴力を可能にする資金を生み出しているとして、ミャンマー・エコノミック・ホールディング・リミテッド(MEHL)とミャンマー経済公社(MEC)が注目されています。

2月にMEHLおよびMECと日本企業との関係について、メコン河開発メールニュースで
クーデター前、2019年に国連が国軍の経済的利益について報告書

 

としてお伝えしていますが、以下はこの「国連のミャンマーに関する事実調査団」の「ミャンマー国軍の経済的利益についての報告書(Economic interests of the Myanmar military)」から、この2社の情報をまとめたものです。尚、( )内の数字は、報告書の段落番号となっています。

 

***
概要

ミャンマーでは、国軍が所有し支配する二つの企業、ミャンマー・エコノミック・ホールディング・リミテッド(MEHL)とミャンマー経済公社(MEC)および両社が所有する多数の子会社が、同国で文民が所有するどの企業よりも大きな収入を生み出している。(48, 49, 61)MEHLは国軍幹部が経営に深く関与しており、株もすべて現役および退役の将校、連隊や部隊、退役軍人が所有している(52, 53, 54)。またMECは防衛省が全面的に所有、支配しているとされる(55)。

MEHLやMECと両社の子会社が生み出す莫大な収入の大半は政府の公式予算に取り込まれず、人道に対する罪を犯している可能性が高いとされる国軍の資金となっている(58, 60)。国連のミャンマーに関する事実調査団は2019年の報告書で、「ミャンマー国軍とその所有会社であるMEHLやMECが参加する外国企業の活動はすべて 、国際人権法や国際人道法の違反の一因となる、またはそれらの違反と関連づけられる危険性が高い」と述べた。

活動分野と傘下の銀行
MEHLは1988年のクーデター後に設立されたUMEHLを前身とする(50)。MEHLの子会社はルビーとヒスイの採掘、セメント製造、観光、銀行、保険など様々な産業で営業している(62)。MECは1997年に設立された。MECの子会社もMEHLと同様、採掘、製造、テレコミュニケーションなど多様な分野で活動しているが、製造と、石炭や天然ガスなどの原材料の生産により重きが置かれている(64)。MECは国軍に天然資源を供給する企業も所有し、国軍が使用する物品の製造工場も経営している(51)。

国際金融公社(IFC)によれば、MEHLが所有するミャワディ銀行は2016年3月現在ミャンマーで4番目に大きな民間銀行だった。同銀行の株主は現役および退役の軍人や関連団体である(65)。MECはインワ銀行を所有している(51)。ドイツ国際協力公社(GIZ)によれば、インワ銀行は現役および退役の軍人によって経営されており、MECの子会社や関連会社の金融手段として機能している(65)。ミャワディ銀行とインワ銀行は、MEHLとMECが米国の制裁下にあっても両社やその子会社が国際金融システムにアクセスするのを助ける重要な手段である(66)。

国軍の関与

MEHLとMECの企業構造やコーポレート・ガバナンス(企業統治)には不透明な部分が多い(52)。どちらも財務報告などを一般に公開する義務を負わないが(53)、MEHLは公開有限会社で、MECは公開有限会社として登録されている非公開持株会社であるため、MEHLのほうがMECよりもわずかにアカウンタビリティがある(53)。

MEHLのパトロン・グループには国軍の最高幹部7人がおり、国軍の総司令官(現在はミンアウンフライン)が会長、副司令官(陸軍の総司令官でもある。現在はソーウィン)が副会長、副総監が書記を務める。このほかに統合参謀長、海軍と空軍の総司令官、兵站総局長も入っている。パトロン・グループに加えて11人からなる取締役会があり、うち7人が現役軍人、4人が退役軍人である(52, 54)。

MECは防衛省が全面的に所有、支配しているとされる。報告などによれば、国軍の兵站総局がMECを経営している(55)。

MEHLもMECもミャンマーの経済企業法のもとでの国営企業ではないが、MEHLの株はすべて現役および退役の将校、連隊や部隊、退役軍人が所有、支配している(53)。アムネスティ・インターナショナルによれば、2019年8月現在、38万人以上いるMEHLの個人株主は全員が現役または退役の軍人で、1800以上いる機関株主は地域司令部、師団、大隊、退役軍人団体などである。機関株主にはラカイン州での軍事作戦を指揮する西部司令部も含まれる。

国軍への金の流れ

MEHLとMECの収入についての情報は少ない。どちらも1998年から2011年までは所得税や商業税を免除されており、これまでに財務報告を一般に公開したことはない。MEHLとMECが生み出す資金の大半は政府の公式経路を通らず、石油・天然ガス、銅、ヒスイ、ルビー、琥珀、森林のセクターからの数十億米ドル相当の収入が使途不明のままであるという報告もある(56)。またMEHLとMECの子会社はミャンマー全国にかなりの面積の土地を所有している。多くは不動産として高い価値があり、これも大きな収入源となっている(68)。

MEHLとMECおよび両者の子会社の納税額を正確に知ることは困難だが、2017から18年にかけてMEHLの納税額はミャンマーで3番目に大きく、MECは11番目、MEHLが所有するミャワディ銀行は2番目だった。それでも、調査によればMEHLとMECおよび両社の子会社からのミャンマーの税基盤への貢献は不足しており、国軍に提供される資金のほうが多いことが示されている。ミャンマーの国軍系企業が生み出す収入の大半は政府に取り込まれず、結果、国軍の作戦実行のために使うことができるようになっている(58)。参考までに、アムネスティ・インターナショナルによれば、2011年までの20年間で支払われたMEHLの配当金の総額は1,070億チャット(当時の公定レートによれば約18億米ドル)を超える。このうち950億チャット(約16億米ドル)が国軍の部隊に送られた。

議会の承認を必要とし給料や調達に使われる公式の防衛予算は2015年以降次第に減っている。国軍は、この公式の予算に含まれず文民による監視も受けない資金源によって収入を補っている。国軍がMEHLやMECなどを通じた経済活動から得る収入の金額は不明だが、その収入が国軍の指導部や作戦の資金となっていることに議論の余地はない(60)。

出典:

ミャンマー国軍の経済的権益についての「国連のミャンマーに関する事実調査団」による報告書のページ(本文、資料、プレスリリースなど。2019年9月16日)
Economic interests of the Myanmar military
https://www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/MyanmarFFM/Pages/EconomicInterestsMyanmarMilitary.aspx 
*とくに参考になるのは報告書本文の pp.18-27

MEHLについてのアムネスティ・インターナショナルの報告書
Myanmar: Military Ltd: The Company Financing Human Rights Abuses in Myanmar (2020年9月10日)

 

アムネスティ・インターナショナル国際事務局発表ニュース

「ミャンマー(ビルマ):グローバル企業 国軍の人権侵害に関係」(2020年9月10日)

 

(文責:メコン・ウォッチ)

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