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クーデター後のカレンニー州における人権侵害についての報告 (2021年5月‐2022年9月)

メコン河開発メールニュース2023年3月6日

 

メコン開発メールニュースでは「クーデター後のカヤー(カレンニー)州の状況とバルーチャウン発電所」として、「カレンニー市民社会ネットワーク(KCSN)」の報告を2021年8月に紹介しました。
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20210810_01.html


このたび、カレンニー人権グループ、カヤン女性機構、カレンニー民族女性機構、カヤー州平和モニタリング・ネットワークの4団体が2月7日、カレンニー(カヤー)州での人権侵害状況についての報告書を発表したのでご紹介します。

報告書「今後どう生き延びることができるのか? カレンニー州における残虐犯罪(原題:How can we survive in the future?: Atrocity Crimes in Karenni State)」(以下、「報告書」)は、2021年5月から2022年9月までにカレンニー州および周辺地域での国軍による民間人に対する空爆、砲撃、殺人、家屋などの破壊、恣意的拘束、拷問、性暴力、強制労働や人間の盾としての使用などの人権侵害を記録しています。報告書によれば、砲撃や焼き討ちにより1,190棟の家屋がひどい損傷を受けたか完全に破壊され、少なくとも18万人のカレンニー民族住民が避難を余儀なくされました。これはカレンニー民族人口全体の40パーセント以上に当たるとのことです。報告書はまた、22件の地雷の被害によって民間人4人が死亡し、子どもを含む70人が重傷を負ったと述べています。

報告書の調査対象に含まれるカレンニー州の北部と、そこに隣接し、多くのカレンニー民族住民が暮らしてきたシャン州南部のペコン郡には、ミャンマーの主要な電力供給源の一つであり、日本とも深い関わりのあるバルーチャウン水力発電所とその関連施設があります。建設時には取水源のモービエダム周辺地域が広範囲に渡り水没し、住民の強制移住がありました。また、発電所周辺に配備された国軍による、組織的な強制労働の問題や、都市に延びる送電塔の下に埋設された地雷による被害の問題も長期間、指摘されてきました。

第2水力発電所は、2013年にODAの無償資金協力で改修されました(供与限度額66.69億円)。日本政府がこの発電所の改修事業の検討を発表した2011年、現地のNGOからは反対の声が上がっていました。

バルーチャウン第2水力発電所>ODA再開可能性に現地から反対の声
http://mekongwatch.org/resource/news/20111104_01.html

2017年に決まった「水力発電所改修事業」(円借款供与限度額107.87億円)が現在も実施中と見られますが、この事業には第1水力発電所の改修が含まれています。
https://www.jica.go.jp/oda/project/MY-P22/index.html

今回の報告書はバルーチャウン発電所や関連施設には直接言及していませんが、本メールニュースでは、発電所や関連施設のあるカレンニー州のロイコー郡、ディモーソー郡、シャン州ぺコン郡についての記述をいくつか抜き出して紹介します。ロイコー郡にはバルーチャウン第1・第2発電所の他にドータチャダムと送電線が、同州ディモーソー郡には送電線が、そしてシャン州ぺコン郡には上記のモービエダムと送電線があります。

( )内は報告書のページ

・[軍政勢力による民間人への攻撃の影響で少なくとも18万人のカレンニー民族住民が避難を余儀なくされ]ロイコー、プルソー、シャドー、ディモーソー、ペコンの5郡からはほとんど人がいなくなった。州南部やディモーソー、ロイコー、プルソー、ぺコン郡では軍政勢力とカレンニー民族防衛隊その他の人民防衛組織などとの戦闘が頻繁に起きている(p.19)

・プルソー郡で国内避難民(IDP)の男性6人が国軍に拉致され、その後8日間にわたって人間の盾として国軍に同行させられた。プルソーからディモーソーを経てロイコーに行ったのち、6人はプルソーにある収容所に入れられ拷問された。同様にロイコー郡とぺコン郡でも民間人が国軍に人間の盾として使われた(pp.31-33)

・国軍はプルソー、ロイコー、ディモーソー郡の5つの村を空爆し、子ども3人を含む民間人少なくとも6人が死亡、9人が負傷した(pp.37-8)。

・シャン州ぺコン郡、カレンニー州のシャドー、ボーラケ、ロイコー、ディモーソー、プルソー各郡では国軍が多数の地雷を埋設している。ディモーソー郡とプルソー郡で、自分たちの村の周辺に国軍兵士が地雷を埋設しているのを見たという目撃者からの報告がある(p.41)

・2022年3月、ぺコン郡で少年(15)が地雷を踏んだ。命はとりとめたものの、右脚の膝から下を切断し、右目も摘出しなければならなかった(p.42)。同年6月、母親と共にオートバイでロイコーからぺコンに向かっていた少女が地雷の爆発により重傷を負った。同じく6月、ディモーソー郡の村で女性が地雷を踏んで死亡した。8月にはディモーソー郡の別の村で女性が地雷を踏み、片脚を失った(pp.41-3)

・ディモーソー、ロイコー、ぺコン各郡は国軍による砲撃や焼き討ちによる家屋の破壊が特にひどかった地域に含まれている(p.44)

参考

報告書 How can we survive in the future?: Atrocity Crimes in Karenni State(英語版、PDF)
https://progressivevoicemyanmar.org/wp-content/uploads/2023/02/4-feb-FINAL-Karenni-Report.pdf

報告書発表についてのプレスリリース(2023年2月7日)
https://progressivevoicemyanmar.org/2023/02/07/how-can-we-survive-in-the-future-atrocity-crimes-in-karenni-state/

バルーチャウン第2水力発電所についてのメコン・ウォッチのページ
http://mekongwatch.org/report/burma/baluchaung.html

(文責 メコン・ウォッチ)

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