メコン河の長さはおよそ4,800kmで、世界で12番目に長い河です。これは、日本で一番長いとされる信濃川の約14倍の長さにあたります。源流をチベット高原に発し、水源から1,000kmほどは、揚子江やサルウィン河と平行して流れています。
源流点から1,880kmは中国領内の山岳部を流下し、ここでメコンは「瀾滄江(らんそうこう/ランチャンヂヤン)」呼ばれています。中国を離れるとラオスとビルマの国境線上を約200kmに渡って流れ、ラオスとタイの国境を流下していきます。そこからはメコン河下流域と称され、ラオス高原部からカンボジアの平原を貫き、ベトナムでメコンデルタという穀倉地帯を形成し、南シナ海に注いでいきます。
同級の長距離河川の流域面積は200万〜300万平方kmとなりますが、山岳地帯を通るメコン河の流域面積は、79万5,000平方kmにとどまります。それでも、日本の面積の2倍以上に相当しています。
流域面積の分布は、上流中国・ビルマ(ミャンマー)が合わせて25%程度、下流4カ国で残り75%を占めます。ナイル河・アマゾン河などは上流で多くの国から支流が流れ込んできますが、メコン河は合流河川が少ないため、上下流国が明確に分かれていることが特徴です。
下流域国では国土に占めるメコン河流域面積の割合が大きくなっており、カンボジアやラオスでは流域が国土に占める割合が85%にものぼります。
国連開発計画(UNDP)人間開発報告書2006によると、タイでは耕地の50%がメコン河流域に存在し、カンボジアでは世界最大の淡水湖の1つであるトンレサップ湖から人口の半分がその恵みを享受しているとみられています。また、ベトナムではメコンデルタで同国の米生産の半分以上、GDPの3分の1を生みだし、流域は1,700万人の居住地となっているのです。
全人口と流域面積の割合から推計される、これら各国の流域人口の合計は6,000万人にのぼります。地勢的にも、メコン流域国の人々の生活がいかにメコン河に依存しているかがうかがえます。
メコン河流域国は、南西モンスーンの影響で特に下流域国で5月から10月まで雨季となり、11月から5月までは北東モンスーンの影響で乾季となります。年間雨量はラオス領内では4,000mmを超える地域もありますが、下流域の年間平均雨量は1,670mm程で、その約88%が雨期に集中します(日本の平均雨量は1,718mm、世界の平均雨量はおよそ970mm)。
こうした年間降雨分布によって、メコン河は5月から増水し、9月頃に最高水位に達します。メコン河の乾季の低水流量は毎秒1,750立方メートルですが、雨季に高水流量が毎秒52,000立方メートルに達する観測所もあります。南シナ海への年間流入量は4,750億立方メートルにのぼりますが、これは日本全国の河川の年間総流出量4,500億立法メートルを上回る量です。
雨季のメコン
乾季のメコン
メコン河の魚は1200種に及ぶとみられています。また、水生生物の多様性は南米アマゾンに次ぐと言われています。
メコンの魚は、「回遊」もしています。「魚の回遊」と聞くと、海と川の間の移動を思い浮かべますが、実はメコン河の魚も多くの種類が河川のなかだけで「回遊」しています。
ここででは、メコン河委員会(MRC: Mekong River Commission)や研究者が実施した調査結果などから、メコン河の魚の回遊について分かっていることをご紹介します。→ 回遊するメコン河の魚
また、メコン・ウォッチでもタイの東北部で魚の回遊について、住民の知識を記録する調査を行っています。→調査研究のページへ