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カンボジアにおける違法伐採の問題に長年関わってきたNGO、グローバル・ウィットネスの職員が同国への入国を禁じられたというニュースです。メコン・ウォッチの杉田玲奈による解説とカンボジア・デイリー紙の翻訳記事です。
国民の約80%が農村部で暮らし、自然資源に依存した生活を送っているカンボジアでは、急激に進んでいる森林伐採は過去10年以上にわたって大きな問題となっ てきました。暴力や脅迫など、伐採企業による周辺住民への人権侵害も深刻であり、また伐採産業への政治家・軍の関与や汚職の問題は、カンボジアに蔓延する 汚職の追放に向けた戦いの最前線とも言われてきました。
こうした中で、被害住民を始め、NGO、援助国、国際機関は、適正な森林や土地の管理に向けた森林セクター改革を長年カンボジア政府に求めてきました。しか し、森林・土地を巡る紛争や違法伐採、汚職の問題は依然として続いています。
違法伐採の問題につきましては、過去のメールニュースでお伝えしていますので、ご参照ください。
グローバル・ウィットネスは過去10年にわたってカンボジアの森林伐採の状況を調査し、国内外で情報発信を行ってきました。カンボジアデイリーの記事は、今 年7月18日に再入国しようとした同NGOの職員1名がカンボジアへの入国を拒否され、その他4人の職員も入国禁止処分を受けていることを報道しています。この 処分以前にも、今年2月に同団体の報告書2千部がプノンペン空港で没収されるなど、カンボジアでの市民社会の自由な活動や言論の自由を脅かすような事態が起 こっています。
The Cambodia Daily
2005年7月21日 Lee Berthiaume
1996年11月、国際通貨基金(IMF)の代表者たちが2千万ドルの融資を取り消すことを発表した時(それはIMF代表団が(カンボジアを)出国する直前に発表 された)、それが何を意味するのか疑問の余地はなかった。
長年に渡り、IMFはカンボジア全土に蔓延する森林伐採を制御することを(カンボジア)政府に迫っていた。しかし改善はなされず、融資機関(IMF)は国を去 る以外に選択の余地はないという状況に陥った。
「7月に政府に森林政策を修正するように求めたが、残念なことに(政府の)行動は我々が期待したよりも極めて少なかった」と、当時IMFの中央アジア局次長 のMichael Kuhnは、1996年にプノンペン国際空港でコメントしている。「コミットメントと言葉は実行に移され、具体的な行動に結びつかなければならない」。
数年後、IMFは戻ってきたが、それはドナーと政府が独立した森林モニターを設置することで同意した後のことであった。1999年に独立森林モニターとして雇用されたロンドンに拠点を置くNGO、グロー バル・ウィットネスは積極的に調査報告を行い、政府の役人の悩みの種となった。
2003年、政府が(同NGOを)独立モニターの役目から「くび」にした後でも、グローバル・ウィットネスは報告を続けた。
政府がグローバル・ウィットネスの職員の入国を禁止し、その他数人の職員の入国も禁ずることを指示した今、焦点となっているのは、同団体が報告活動を続け られるのか、またドナーはカンボジアの森林問題に関わり続けるのか否か、である。
1990年代、IMFや他のドナーの関心事は、カンボジアの森林が伐採されているという事実ではなかった。真の争点は、伐採がいかに行われており、それによって 誰が利益を受けているのか、ということであった。
その昔、青々と生い茂っていたカンボジアの森林は、1980年代、90年代を通して、安易な現金源として政府とクメールルージュ(ポルポト政権)により伐採された。
森林は広範囲で破壊され、国の持続可能な収入源になり得るものが数年で枯渇してしまう、と様々なグループが警報を鳴らすようなやり方で伐採が行われた。オックスファムGB(訳者注:イギリスのNGO)の2000年出版の報告書によると、1960 年には73%だったカンボジアの森林分布率は、2000年には35%〜50%まで減少した。さらに、ほとんどの伐採業務は課税の対象とならず、国、そしてカンボジア 人一般への利益は少なかった。
「伐採からの税金の徴収はとても少なかった」、とCenter for Social DevelopmentのChea Vannath代表は水曜日(7月20日)に語った。「(伐採は)汚 職の大きな源となっていた。(金は)国庫に行くかわりに個人のポケットに入ったのだ」。
実際に、2000年のアジア開発銀行の報告書によると、数百万ヘクタールもの土地を占める森林伐採権が発行されていたにも関わらず、90年半ばまで歳入は落ちて いる。
グローバル・ウィットネスは、独立森林モニターとして雇われる前も伐採産業の汚職について報告を行い、政府役人トップの関与を示す厳しい報告書を作成して いた。
独立モニターとなったグローバル・ウィットネスは、(森林)産業で進行する汚職について政府を批判する調査報告書をさらに発表し、同NGOと政府は多くの 場合衝突し合っていた。
2001年1月、ドナーと政府の会合の前日に批判的な報告書が発表されたため、政府は同NGOを国外追放すると脅し、両者の対立は悪化した。
「我々は憎しみあっている」と政府のスポークスマン、Khieu Kanharith氏は水曜日(7月20日)に認めた。「彼らは整然と政府を攻撃し、問題を政治化している」。
しかし、違法伐採に取り組むことへの国際的な圧力は高まり続け、2001年12月、首相は同年6月にドナーが勧告した伐採活動へのモラトリアムを設けることを発 表した。
グローバル・ウィットネスは、それでも違法伐採は依然として継続していると報告した。2002年7月、同グループは、違法伐採について対策を怠っていると政府 の役人を酷評する報告書を出した。
グローバル・ウィットネスは政府の面子を潰すために警察の特権乱用に関する証拠をでっち上げた、とフンセン首相が責めた1ヶ月後の2003年1月、ドナー会合中にフンセン首相は グローバル・ウィットネスを(モニターの役目から)解雇した。しかし、同NGOを国外追放するまでには至らなかった。
2003年7月、政府はスイスの会計事務所、Societe Generale de Surveillance(SGS)を新しい森林モニターに任命し、新しい任務は調査ではなく違法伐採と 戦う森林局の取り組みの評価である、とした。
森林セクター改革に進展がないことにも起因して、時間とともに問題の焦点は伐採から離れ、今は経済的土地利用権と土地収奪に移っていると、数人の外交官は 水曜日(7月20日)に話した。
「十分な進展がないと感じたため、我々は森林セクターから撤退した」とある外交官は語った。「全ての努力は無駄だったと感じた」。
世界銀行は今年、問題となっている540万ドルの森林伐採権管理プロジェクトの見直しを発表した。この事業は伐採企業に広い面積の森林を管理させることを可 能にするものである。
「これは依然、大きな問題だ」とChea Vannath氏は言う。
政府の違法伐採対策についてのSGSの報告書が様々なNGOから批判されているなか、グローバル・ウィットネスは森林犯罪についての批判的な報告書の発行を継続している。 また、グローバル・ウィットネスは森林関連の問題や違法伐採についての情報をドナーに提供し続けてきた。
「森林(問題)に関して彼らはドナーを助けてくれる」とある外交官は語った。
「彼らは重要な仕事をしていると我々は認識している」。
月曜日(7月18日)、ドイツ国籍のグローバル・ウィットネス職員、Marcus Hardtke氏は入国を拒否された。
入国管理局の役人は、Long Visalo外務省次官がHardtke氏と他4名のグローバル・ウィットネス職員の入国を禁じるレターを6月28日に発行したことを確認した。
公式の理由は説明されないままであり、水曜日には外務省職員からコメントを受けることができなかった。Khieu Kanharith氏は禁止の理由については把握していないと語った。
(前述の)外交官によると、ドナーはビザ禁止について懸念しており、状況を注意深くフォローしているという。
在カンボジア英国大使のDavid Reader氏はグローバル・ウィットネスと会い、状況について話し合っていると水曜日に話したが、それ以上は語れないという。
火曜日(7月19日)の声明のなかで、グローバル・ウィットネスのJon Buckrell氏は、同NGOは戦いをつづけるつもりだと書いている。
「もちろんビザの禁止は迷惑だが、我々がカンボジアで活動することを止めることはできない。違法伐採の問題に10年間焦点を当ててきたが、活動の対象を拡大 し、森林以外の組織的な汚職の他の側面も含めるつもりだ」とBuckrell氏は書いている。