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スレポック川ダム>カンボジアの食料安全保障を脅かす

メコン河開発メールニュース 2006年11月5日

ベトナム中部高原からカンボジア北東部を流れるメコン河の国際支流であるセサン川では、上流のベトナム領内に完成したヤリ滝ダムが下流のカンボジアの農村に甚大な被害を及ぼしています。やはりベトナムから流れ、途中でセサン川と合流して一つの川になってメコン河に流れ込むスレポック川でも、同様の懸念がもたれています。ここでは、日本の企業や国際協力銀行(JBIC)の関与が検討されています。

以下、スレポック川における上流ダム開発が下流のカンボジアに引き起こす悪影響について、メコン・ウォッチの後藤歩による解説と翻訳記事です。


スウェーデンの水力発電コンサルタントであるSWECO Gronerがベトナム電力公社に委託され、スレポック川のベトナム領内におけるダム建設の下流カンボジアにおける環境社会影響調査をおこないました。2006年1月にその最終報告書案が出されましたが、報告書案は、上流ベトナムにおけるダム建設は、スレポック川の漁業資源や河岸での野菜栽培に悪影響を与えるため、下流のカンボジア領内に住む人々の食料の安全確保を脅かすことを予測しています。
なお、これまで、スレポック川に建設中のブオンクオップダムに国際協力銀行(JBIC)が融資を検討しているとお伝えしてきました。

スレポック川ダム>異常な洪水を受けて住民組織がJBICに再度要請

スレポック川ダム>現地住民が日本政府に融資しないよう請願

スレポック川ダム>国際協力銀行が融資検討中

現地の住民組織によれば、今年8月に住民組織が出した書簡へのJBICからの返答で、JBICはブオンクオップダムへの融資審査を中止したと連絡し、JBICの検討中の案件リストからも名前が落とされています。一方、カンボジア政府資料によれば、日本の中国電力がスレポック川のダム開発を調査し、JBICの協力を検討しているとあります

ベトナムの水力発電ダムがカンボジアの食料安全保障を脅かす

GRAINNE RYDER
バンコクポスト、2006年10月7日

北欧の水力発電コンサルタントによる報告書は、上流ベトナムにおける水力発電ダムの悪影響を受けるカンボジアの村は食物の生産方法を大幅に変える必要性がある、と警告する。

スウェーデン国際開発協力庁(SIDA)の資金で作成された報告書は、セサン川上流ベトナム領内の水力発電ダムは魚類資源を減少させ、河岸での畑作を不可能とし、人びと、特に貧困世帯の栄養と生活に負の影響を与える、と予測する。

カンボジアNGOフォーラムは、「ベトナム領内の水力発電開発によるスレポック川カンボジア領内での環境影響評価」報告書の最終草案を、報告書作成に資金提供したSIDAより入手した。

カンボジア領内のスレポック川沿いには、ほとんどが少数民族である約1万1000人の人びとが暮らし、漁業や飲料水、生活用途や灌漑、家畜、そして運輸を川に依存している。しかし、これらは全て、ベトナム電力公社が今後5年の間にスレポック川で建設予定のいくつものダムにより、深刻な影響を受ける。

そのうち最大規模のダムである発電出力280MWのブオンクオップダムは、2003年から建設されており、2008年からの運転が見込まれている。

調査報告書は、(現在)川沿いの人口のほとんどに食料安全が保障されている、と言及する。川にいるたくさんの魚が主なタンパク源となっているため、栄養不良の子供はいない。ほとんどの村の家には十分な耕作地があり、余剰の米すらある。そのため、魚や家畜とともに余剰の米を売ることで、現金収入を得ることが
できる。

しかし、野生動物の狩猟は制限されており、家畜は主に販売用として育てられ消費対象ではないため、主なタンパク源として魚に代わる食べ物はなく、(ダムができた後)特に成長過程の子供のたんぱく質不足が心配される。

調査報告書は、川沿いの村では大幅な変化が必要になるかもしれないと結論づけた。(ダムの影響が)緩和されない限り、スレポック川の魚の減少は特に貧困層で漁業で生計を立てている世帯の家計に大きく影響する。

(調査報告書を作成した)SWECO Gronerによれば、川沿いの人びとの将来の栄養状態を保障するために必要なのは、食習慣(もっと頻繁に肉を食べる)と経済資源(他の現金収入源、またはさらなる牧草地、普及支援や研修、そしてウサギなどの早く育つ新種の導入などを要求したより効率的な動物飼育)の両方における変化である。

その他の代替案として、ベトナム電力公社が水力発電ダムの運転方法を変えることもできる。調査報告書はdaily peaking(訳注:一日で最も高い電力需要を満たすために電力供給を行うこと)がもっとも環境負荷が高い運転方式であると示している。

SWECO Gronerは、「下流地域への破壊的な影響を避けるためには、ダムの運転スケジュールの大幅な再検討が必要である」、と書いている。報告書は、できるだけ多くの魚類種を残そうとするならば、唯一の方法はできるだけ川を自然な状態に近づけることである、と述べている。

SWECO Gronerはさらに、カンボジアとの国境近くに、下流カンボジアへの水の流出を平均化することができる、特別に設計された再規制のためのダムを建設することを勧めている。

SIDAは今年末、プノンペンにおいてSWECOの勧告に関するパブリックレビューをおこなうことに合意した。

*SWECO Gronerは、スウェーデンの代表的技術コンサルタント会社であり、ベトナム電力公社への長年の水力発電のアドバイザーであるSWECOの子会社である。

*筆者はカナダのトロントにあるNGOで、海外援助の環境経済影響をモニタリングしているProbe Internationalの政策ディレクター。

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