ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > メコン上流開発>石油製品の運搬が始まる
メコン河開発メールニュース 2007年1月16日
いよいよディーゼル油など大量の石油製品がメコン河本流を使って中国に運ばれ始めます。安全対策上、当初は輸送量を制限するはずでしたが、今は撤廃されています。メコン河が大量油流出事故の舞台になる可能性も出てきました。
以下、メコン・ウォッチの土井利幸による解説と、タイ字新聞の翻訳です。
2006年4月13日のメールニュース「メコン上流開発>4カ国が更なる浚渫に合意」で、中国・ビルマ・タイ・ラオスの4ヵ国がさらに4ヵ所の浅瀬・早瀬を爆破し、メコン河本流を使った石油製品の運搬事業を進めるなど9項目に合意したとお知らせしました(合意時期は2006年3月)。
中国現地からの最新報道によりますと、この合意に基づくと見られる最初の運搬船2隻(300トン)が2006年12月29日に雲南省景洪港に入港した模様です。
2006年3月の合意では安全上の配慮から輸送量が月1200トンに制限されていました。ところが、その後中国が安全システムを整備することでこの制限は取り払われ、タイから中国への石油輸送は年間7万トンに達し、将来的には20万トンに上るとの試算もあります。
詳細は、Go Kunming 'China receives first oil delivery via Mekong River',2007年1月2日, をご覧下さい。
以下では、中国が整備したと言われる安全システムについて、4ヵ国の共同検査の模様を報じたタイ字紙の記事を紹介します。安全システムが中・タイ両国の民間会社に依存したものであることが読み取れます。
安全システムがあるに超したことはないでしょうが、この安全システムは輸送量制限を撤廃するための方便と思えてなりません。多くの人びとが生計手段としているメコン河にこのような大きなリスクを持ち込むことがはたして賢明なのでしょうか?そして、もし事故が起こった場合に最大の損失を受けるであろう下流国のカンボジアやベトナムが協議や検査に参加した様子は見られません。
タイ『プージャッカーン』紙(原文タイ語)
2006年12月23-24日
【チェンライ県発】IRPC社(元TPI社)が中国南部まで船でメコン河を遡上し石油を運搬する事業に乗り出す。販売価格は1リットル当り14〜18バーツ(約46〜59円)の見込み。先日、中国・ビルマ・ラオス・タイ4ヵ国の責任者が中国の民間会社の運搬船2隻と護衛船の共同安全検査を実施。近い将来、月100万リットルの運搬量に達する模様である。
本紙記者がチェンライ県から報告したところによると、2006年12月21日、中国・ビルマ(ミャンマー)・ラオス・タイ4ヵ国で構成するメコン河航行委員会の責任者(団長ルー・リアオ・オー雲南省運輸部輸送課長(雲南)、ヤーンジン西双版納市市長室副書記、リウ・ジュン・ジア西双版納市輸送担当、ハイ・ウィン警部補(ビルマ代表)、ターウワントーン・ソムパワット運輸郵政建設省水上運輸課課長(ラオス)、プラサルート・ウォンスワーン港湾局代表(タイ)、サクチャイ・カムマラー港湾局環境改善係、サクダー・サウェートラット・チェンセン関税検査官・実施担当、ソムパン・リアウチャルーン中・タイ調整担当、ナタポン・ポンプラユットIRPC社(元TPI社)石油事業担当副代表理事)が、チェンライ県チェンセン郡ヴィアン地区のメコン河畔に建設された施設に特別停泊していた西双版納ガス&ペトロリアム社所有の石油運搬船2隻(1隻当り150トン)と護衛船1隻の共同検査を実施した。
検査ではトラック8台分のディーゼル油を河岸に敷設したパイプを通して運搬船に積み込んで油の流出や安全システムなどを点検し、タイからディーゼル油を運搬船2隻に載せてメコン河を330キロ離れた中国の関累(グワンレイ)港まで運び中国南部で販売する計画に備えた。
ソムパン・リアウチャルーン中・タイ調整担当によると、今回の船による石油運搬はタイのIRPC社が西双版納ガス&ペトロリアム社と合意に至ったおかげで実現した。西双版納ガス&ペトロリアム社はリウ・ティアン・ウイ氏が所有する中国南部の石油会社で、タイからディーゼル油とベンジンを船で輸入し中国で販売する。過去にも民間企業による運搬は行われたが規模は小さく、今回の石油運搬船は建造したばかりで中国の基準に合わせた安全システムも整え、運搬船がメコン河を航行する際には護衛船が1隻同行する。仮に事故が起こった場合は即座に石油を回収し護衛船に貯蔵する。この安全システムには信頼をよせており、今回の検査では4ヵ国とも満足している。
IRPC社の責任者は、石油運搬船は1隻当り25万リットルの輸送が可能で、税金などの免除やタイへの還流を防ぐ検査もあるので、すべてが滞りなく進めば1リットル当り約14〜18バーツ(46〜59円)でタイから中国に運んで販売することが可能であると語った。また、この責任者は、調査の結果、中国南部では一番近いところから石油を運んでも約4000キロの距離があり、中国側もタイからの330キロの方がはるかに近いと考えていることが分かったとも述べた。
石油はラヨン県にあるIRPC社の精製所から輸送し、タイと中国の民間同士の取引として両国間の石油取引量も増加し、今後も購入注文が続けば月間何百万リットルの量にも達することが期待できる。
ラオスのターウワントーン・ソムパワット運輸郵政建設省水上運輸課課長も、今回石油運搬船の共同検査に参加したのは、運搬船の安全システムについて知りたかったからで、石油の流出はなく、メコン河航行の際にも協力が得られ、輸送準備の全体像が把握できたと語った。
【関連メールニュース】
2006年4月13日 メコン上流開発>4カ国が更なる浚渫に合意
2006年2月28日 メコン上流開発>中国とラオスの水運協力
2005年4月26日 メコン上流開発>タイから雲南省に液化石油ガス
2004年6月8日 メコン上流開発>水位低下で貨物運輸がストップ