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JICA環境社会配慮ガイドライン改定委員会
2003年9月16日 メコン・ウォッチ 松本 悟
(1) 連携D/Dが円借款供与の意思決定後に行われることを考えると、連携D/Dによって移転住民の数の変更が判明するなど環境社会配慮上の重大な調査結果の修正が起きないようにすべきである。
(2) 環境社会配慮上の重要な調査を連携D/Dに先送りしたまま、円借款供与の意思決定を行うべきではない(実際に関わっているSAPROF調査で懸念を感じている)。
(3) 環境社会配慮のための国際協力銀行ガイドラインには、連携D/Dに関わる規定が何も含まれていない。連携D/Dの要請があった場合の審査についてJBICは明確にすべきである。
9月16日にJICA本部において、JBIC澤井委員、JACSES石田委員、JICA富本委員、JICA田中委員、ECFA高梨氏(氏家委員の代理)、JICA社会調査部、JICA環境女性課、それに私が参加して、本件に関する会合を開催した。その結果、
a. 連携D/D実施のタイミングは、JBICが環境社会配慮ガイドラインに基づく審査を終えて行内意思決定し、政府事前通告段階時点(政府勉強会を経て日本政府として意思決定を終えた段階)である。したがって、上記(1)や(2)のような懸念は払拭される。
b. (3)の懸念については、JBICに対して公開対象の文書でaの手続きであることを明らかにして欲しいと求めたが、明確な回答は得られなかった。
c. 連携でないD/Dについては、要請時点でJICAガイドラインの遵守を求めるが、これまでD/Dを想定していなかったため、現在の提言で十分かどうか確認する。もし追加項目が多すぎたり複雑になりすぎたりする場合はJBICガイドラインを使う。
d.D/Dでの環境社会配慮の手続きと内容については、上記事項をふまえて作成する。
以上の了解が得られたと理解しており、それに基づいて以下の文案を提案する。
JICAは相手国政府・実施機関が作成した環境社会影響の回避・緩和・補償などに関わる対策や環境管理計画、及び有償資金協力供与の条件となる環境社会面での対応等を実施するための具体的なスケジュール、人員・体制、予算措置などが適切に確保されているか確認する。適切に確保されていない場合は改善を求める。改善がなされない場合は、詳細設計調査の中止を外務省に提言する。カテゴリAまたはBに分類されたプロジェクトについては、環境社会配慮に必要な調査団員を派遣し、関連情報の収集と現地踏査及びステークホルダーとの協議を行う。
環境社会影響に関する回避・緩和・補償策、環境管理計画、有償資金協力供与の条件となる環境社会面での対応などを適切に実施するために相手国政府・実施機関とJICAが行う事項を明確にしS/Wに盛り込む。また、詳細設計調査期間中に新たな環境社会影響が判明した場合の対応をS/Wに盛り込む。カテゴリAまたはB案件は、S/W作成過程にステークホルダーの意見を反映する。S/Wの内容に合意できない場合は署名を行わずに保留する。S/Wと環境社会配慮に関する情報(事前調査報告書の関連部分を含む)を署名後速やかに公開する。
S/Wでの合意に基づき、対象プロジェクトの環境社会影響に関する回避・緩和・補償策、環境管理計画、融資の条件などが適切に実施されることを確保するために必要な支援を行う。詳細設計調査中に判明した新たな環境社会影響については、軽微なものであれば相手国政府・実施機関やステークホルダーなどと協議して、対象プロジェクトが本ガイドライン及びJBICガイドラインを遵守するように適切な対応策を検討する。もし重大な影響が判明した場合や両ガイドラインの遵守が困難と判断される場合は、外務省に対して詳細設計調査の中止を提言する。JICAは、環境社会配慮面での調査や支援の内容を含んだ詳細設計調査の最終報告書を作成し、両ガイドラインを満たすことを確認した上で相手国政府に提出する。最終報告書は、外務省への提言内容を含めて速やかに公開する。
*JBICガイドラインの遵守を盛り込んだのは、本提言では対象プロジェクト実施中のモニタリングについて何も触れていないからである。