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民主化と環境社会配慮について

JICA環境・社会配慮ガイドライン第7回改定委員会

2003年4月25日 松本 悟

JICAは2001年度に民主化支援について研究を行い、「民主化支援のあり方(基礎研究)報告書 民主的な国づくりへの支援に向けて―ガバナンス強化を中心に―」(国際協力事業団、国際協力総合研修所、2002年3月)をまとめた。この中で民主化の目的を「政治的自由などの基本的人権の尊重及び政治参加を促進し、また参加型開発の推進にも適した政治・行政・社会を構築する」とし、開発の視点から見た場合は「開発成果を持続させるための仕組みと能力」と整理している。その上で、「民主的制度」「民主化を機能させるシステム(政府と市民社会のガバナンス)」「民主化を支える社会・経済基盤」の3つが不可欠だとまとめている。別の言い方をすれば、日本が民主化支援を必要と考えるような被援助国では、程度の差はあれ「開発成果を持続させるための仕組みと能力」が不十分だということである。 この分析を環境社会配慮の点から捉えると、民主化が進んでいない国では、開発事業に伴う環境社会影響に対して適切な配慮をする仕組みと能力の面で、問題があることが十分に予想される。「民主化と環境社会配慮」とは、環境社会配慮において、事業を実施する国や地域で民主化に重要な上記の3つの側面がどのような状況かを考慮して適切な対応をとることを意味している。

具体的な事例として「【ビルマにおける調査の可能性と限界】国際労働機関(ILO)の2001年9月ハイレベルチーム調査〜ビルマでの強制労働に関する調査〜」という資料を添付した。軍事政権下で、上記でいう民主的制度や民主化を機能させるシステムが極めて不十分なビルマ(ミャンマー)において、住民の「自由な意見」にできる範囲で近づくために国際労働機関(ILO)がどのような配慮をしながら現地調査を行ったかをまとめたものである。同時期に日本の外務省・JICAは、こうした配慮なくバルーチャン第二水力発電所改修事業に伴う社会影響調査を行い、問題なしと結論付けている。

ビルマだけでなく、例えば隣国のラオスやベトナムといった社会主義政権の国でも、程度の差こそあれ、民主的制度やそれを機能させるシステムの現状を考慮した上での、事前調査・事業実施が必要である。また、民主化を支える社会基盤と定義された識字率や教育水準、あるいは経済基盤とされた道路整備が低い地域で実施する情報提供や住民参加を意味あるものにするために特別な配慮が必要であろう。

以上の背景から、事業の検討、調査、実施、モニタリングにおいて環境社会配慮を行うにあたっては、当該国や地域の「民主的制度」「民主化を機能させるシステム(政府と市民社会のガバナンス)」「民主化を支える社会・経済基盤」に十分考慮した方法をとるすべきである。

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