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過去の問題事例
JICA調査 過去の問題事例
メコン・ウォッチ、FoE-Japan、フィリピン情報センター
2002年12月18日
1.バンパコンダム(タイ)
発生している問題(情報源:クルンテープ・トゥラキット紙、2001年12月10日)
- 塩害と貯水による水質汚染。川には養豚場・エビの養殖田・水田などから有機物が大量に川に流れ込んでおり、流れを堰き止めることで水質汚染を引き起こしている。
- 流域12か所で大きな崩落が起き、寺・学校・民家、県知事公邸等に被害。原因は、灌漑局が地質学に基づき地域の土壌を調査していないこと、バンパコン川が他の河川と違い湾曲していることなどを考慮せずにダムを作ったこと。
- タイの国会で大きな問題として取り上げられ、JICAへも聞き取りを行ったと報じられた。
JICAの関わり
- バンパコン川流域農業用水開発プロジェクト実施可能性調査(1990年10月報告書完成)
- バンパコン導水ダム事業詳細設計調査(1993年11月報告書完成)
2.ラムタコン揚水発電プロジェクト(タイ)
発生している問題(情報源:メコン・ウォッチによる現地聞き取り調査、2002年初め〜現在)
- 1995年末から上部池建設のために2年7か月のもの間、ほぼ毎日爆破作業が行われ、工事による粉塵がシーキゥ郡カオヤイティアン第6行政村(約120世帯)と第10行政村(約130世帯)の2つの村に降り注いだ。
- 爆破作業による粉塵によって、住民の健康被害、果樹・野菜・家畜への悪影響、騒音による家畜や人間の健康への影響が起きている。
- 生活再建のためのクレジットは借金を増加させる結果に終わった。
- 生活用水のための貯水池の水で皮膚病が発生した。
- JICAの実施可能性調査報告書で粉塵や保健衛生の対策の必要性を提言しているが、何ら対応策が取られていない。
JICAの関わり
- ラムタコン揚水発電開発計画事前調査(1990年1月報告書完成)
- ラムタコン揚水発電プロジェクト実施可能性調査(1991年11月報告書完成)
3.コクインナン導水プロジェクト(タイ)
懸念されている問題
- 導水されるイン川とコク川沿いの生活への悪影響(乾季の水不足、淡水魚への影響、内陸洪水の減少による生態系への影響など)
- 導水先のナン川流域での洪水
- トンネル掘削による国立公園への影響と掘削した大量の土砂による影響
- 水需要への疑問と水料金に反映されるコストの高さ
- 地域住民への情報提供と協議の不充分さ
- JICAは環境技術支援調査で多くの問題を認識しているにもかかわらず、実施可能性調査では、このプロジェクトを「効果的な方法の1つ」と結論付けている。
JICAの関わり
- コクインナン導水プロジェクト事前調査(初期環境評価、1997年3月報告書完成)
- コクインナン導水プロジェクト実施可能性調査及び環境技術支援調査(1999年11月報告書完成)
4.ナムニアップ第1ダム(ラオス)
懸念されている問題(情報源:現地聞き取り、Reference Documents for third
General Workshop)
- 淡水魚とそれに依存する住民への深刻な影響
- タイの余剰電力による需要への疑問→事業の必要性への疑問
- ダム以外の代替案を検討していない
- 移転や周辺住民12000人に影響があると言われている
- 多くの問題を指摘しながらプロジェクトはフィージブルと結論
- ダムのリスクに関する住民への説明不足
JICAの関わり
- ナムニアップ水力発電プロジェクト実施可能性調査(1996年〜2002年)
5.メトロセブ開発計画(セブ南部埋立事業、南部海岸道路建設事業)(フィリピン)
プロジェクトの問題点
セブ市を中心とする地域の総合開発計画の要となるセブ市の開発計画のうち、工業団地造成のためにセブ市南部の海上を埋め立てる南部埋立事業、工業団地とセブ島各地とを結ぶ産業道路を建設する南部海岸道路建設事業が、周辺住民の生活と地域の環境にマイナスの影響を与えている。
- 住民への事前の説明なし
- 不充分な環境影響調査(埋立て海域の汚染、埋め立て用土砂の採取地の荒廃)
- 住民への影響の範囲を立ち退きのみに限定
- 間接的な影響による住民生活の窮乏化の予測なし
JICAの関わり
1994年7月 |
JICAがマスタープラン「セブ地域総合開発計画(セブ2010)」を作成 |
1994年(推定) |
DPWH(フィリピン公共事業道路省)によるF/S |
1995年8月30日 |
第20次円借款契約締結(埋立て約123億円、道路建設約184億円) |
1998年 |
埋立て開始、道路建設開始 |
2002年現在 |
埋立てはほぼ終了、道路建設は継続中 |
6.ソンドゥミリウ水力発電事業(ケニア)
ケニア西部のビクトリア湖に流れ込むソンドゥ川に建設中のダム。
プロジェクトの問題点
- ケニアの電力需要をまかなうための地熱や風力など、ダム以外の代替案の検討がない
- ダムによるソンドゥ川の水量変化や集水域の森林破壊の状況など十分な環境影響調査が行われておらず、地域の水利用などプロジェクトによって地域生活にどのような影響があるのかについても十分な調査が行われていない
- プロジェクト調査の段階で住民への事業の十分な説明や、地域住民との適切な協議が行われていない
- 移転住民への補償や生計手段を喪失した住民への適切な補償が行われていない
- 道路建設による地域への埃の被害や、トンネル工事による地域住民への振動の被害など工事に伴なう地域への環境被害が拡大している
- プロジェクトの問題を指摘する住民やNGOへの狙撃事件や逮捕、脅し、住民集会への弾圧など地域での人権侵害が顕著となった
JICAの関わり
1985年12月 |
JICAが「ソンドゥ川水力発電開発計画調査」F/S |
1989年6月 |
OECF(当時)が環境影響調査などへの支援(6億6800万円) |
1997年1月 |
OECF(当時)が第一期工事への支援(69億3300万円) |
1999年3月 |
ダムの建設工事開始 |
7.サンロケ多目的ダムプロジェクト(フィリピン)
フィリピンルソン島北部のアグノ川に建設中の多目的ダムプロジェクト(発電、洪水制御、灌漑、水質改善)
プロジェクトの問題点
- 発電、灌漑、洪水制御、水質改善という目的それぞれの必要性を検討することもなく、また、ダム以外の代替案の検討もなされていない
- JICAの水文調査はダムの建設を前提としており、住民のあげている上流の土砂堆積の問題、また、灌漑用水の水質に対する問題等を解消するものではない
- ダムの影響を受ける住民への調査段階からの情報公開が行なわれておらず、また、適切なコンサルテーションも行なわれていない
- 移転住民や生計手段を喪失した住民への適切な補償が行なわれておらず、ダム建設が行なわれる以前より生活が苦しくなっている住民が多数いる
- ダムの問題点を指摘する住民・NGOへの嫌がらせや、軍による地域社会の監視など、現地では適切な意見を言う場が失われている
JICAの関わり
1979年 |
実行可能性調査F/S(ELC) |
1984年 |
環境影響評価書の作成(フィリピン電力公社) |
1985年 |
JICAが実行可能性調査について追加調査(水文分野)の最終報告書 |
1997年 |
追加の環境影響評価の作成 |
1998年2月 |
ダム建設工事開始 |
1998年10月 |
日本輸出入銀行(当時)がサンロケパワー社への融資(約5億ドル) |
1999年9月 |
日本輸出入銀行(当時)がフィリピン電力公社への融資(約4億ドル) |
2003年1月 |
商業運転開始予定 |