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手続き「1.基準」〜「2.発掘」
JICA環境配慮ガイドライン改定委員会
2003年6月20日 メコン・ウォッチ 松本 悟
1.基準
- 相手国の法律
- 自然環境・社会環境面で参照すべき国際基準・条約・宣言(自然環境面ではラムサール条約、世界遺産条約、生物多様性条約など、社会環境面では人権に関わる国際的な取り決め)
- JICAの課題別指針など他のガイドラインについても環境社会配慮上遵守の対象となるものを抽出して適用する(ADBの政策とOMの関係)。
2.プロジェクトの発掘段階
この段階での獲得目標は、「要請段階での情報を増やし、計画段階で深刻な環境社会被害が見込まれるにもかかわらず、相手国政府に回避・緩和策や代替案の検討、更に影響住民への十分な説明と社会的合意を行う意思が弱い事業を不採択にする」こと。
2−1どういう場合にプロジェクト形成調査を行うかを明確にする
- 現在プロ形を実施するのは2つのケースだと理解する。1つはJICA(日本政府)自身が案件を発掘したいと考えている場合。もう1つは要請を受けた案件に対する調査。
- 後者の要請を受けた案件についてはプロジェクト形成調査を実施すべきではない。Ownershipを重視するのであれば、必要な情報は相手国政府に照会し、そのプロセスを通じて相手国政府の自助努力を促すべき。また、要請の採択にあたってなお調査が必要であれば条件付実施にして事前調査で対応できる。
- 前者を認めるかどうか。関係省からプロ形を通じて何らかのプロジェクトを作るように言われるケースを耳にしている。プロ形がなぜ必要なのか改めてJICAに確認する必要あり。
- もしプロ形が必要だという合理的理由があるならば、要請に基づかない調査なので、日本政府としてかなりな透明性が求められる。また、必ずしも要請につながらなければならないのかも検討を要する。
2−2要請書の中に書き込むべき項目を特定する
- 現状の要請書のフォーマットに、環境社会配慮項目として、『事業の必要性』『事業の必要性の把握方法』『事業が実施される地域の経済・社会状況(特に生業と民族構成を加える)『事業地域の自然環境(国立公園、マングローブ林など)』『予測される環境社会影響』『事業の必要性や環境社会影響を把握する段階での住民への情報提供や住民との協議の状況』『今後の住民との協議計画』『代替案の検討結果もしくは今後の検討計画』という項目を加える⇒これは外務省への提案
2−3要請書に対するJICAのコメントを適確なものにする
- 環境社会審査課(仮称)を設置して、本ガイドラインに基づく審査を行う。
- この時点でスクリーニングを行い、カテゴリーA、B、Cに分類する。
- カテゴリー分類に必要な情報が不足する場合は、相手国政府に照会を行う。
- JICAの人的資源や情報源は限られているのでカテゴリーA案件については要請段階の情報の一部(事業名、実施地域、概要)をJICAが公開し外部からの情報提供を求める。この際、公開期間を最低でも30日は確保する。
2−4JICAの外務省へのコメントに対する基準
- 以下の場合は、環境社会配慮の点から案件の不採択を外務省に進言する。『開発ニーズの把握が不適切な場合』『事業化されれば緩和策を講じたとしても深刻な環境社会影響が予測される場合』『深刻な環境社会影響が懸念されるにも関わらず影響を受ける住民や関係する市民社会組織の関与がほとんどなく今後も計画していない場合』『開発事業による悪影響を受けやすい地域におけるカテゴリーA案件』『JICAが求めた追加的な関連情報が提供されず事業支援の是非を判断できない場合』『事業が行われる地域の社会的・制度的な条件を勘案すれば環境社会配慮の回避や緩和策の実施に困難が予想される場合』
- また、不採択までいかない場合でも、重大な環境社会影響が予想される際には『相手国において当該事業の環境アセスメントが必ず実施されることを求める』ことを外務省に提言し、必要に応じて『個別事業の要請であっても代替案検討を含むより上位の調査に変更すること』や『事業への無償資金協力から開発調査に変更すること』『影響住民との協議を十分行うこと』『代替案の検討を十分に行うこと』などを条件とすることを外務省に提言する。
2−5要請書へのJICAのコメントが責任あるものとする
- 外務省が調査の実施を決定した事業については、JICAがどのようなコメントをしたかを事後的に公開する。
- 公開するJICAからのコメントには、(1)開発ニーズ、(2)環境社会影響、(3)調査や事業の実施段階での政治・社会状況への配慮、(4)住民参加と情報公開、についての分析と見解を含み、その上で(5)要請案件への支援に対するJICAの見解とその根拠を明記する。
2−6外務省による意思決定への反映
- 外務省はJICAのコメントを尊重した上で支援に対する意思決定を行う。JICAが不採択や条件付採択を提言した事業を支援する場合、JICAのコメントに対して外務省の見解を明らかにしてそれを公開する。
- 外務省は採択を決めた事業に対するJICAのコメントを相手国政府に伝え、以降のプロセスに反映されるよう求める(公式な文書の調印はあるのか?なければ、実施の通知の中で伝えることが適当)
(了)