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中国雲南省の開発問題
中国雲南省でもっとも大きな問題は、メコン河本流ダムと上流浚渫事業です。ダム建設による中国国内の現地住民への影響はさることながら、上流での開発ははるか下流のトンレサップ湖にいたるまで大きな影響を及ぼすことが懸念されています。雲南省内で発電された電力はまず、中国国内の広東省などに送られた後、タイやベトナムに輸出されます。また、メコン河流域における投資家としての中国企業や中国の輸出入銀行の役割も大きくなりつつあります。
メコンウォッチが着目している中国雲南省の開発事業
- メコン河上流(瀾滄江)連続ダム
現在、中国雲南省においてメコン河本流における14のダム・プロジェクトが計画、建設されています。メコン河における本流ダム開発は、その影響の大きさと各国の利害関係を調節することを理由に、一度も実現に至りませんでした。しかしメコン河委員会(MRC)の正式メンバーでない中国は、経済発展に伴う電力需要を背景に本流におけるダム建設を進めています。本流ダムの建設は、中国国内における住民移転や環境影響のみならず、ダムによる河川流量や水質の変化が下流の国々へもたらす広範な影響が懸念されます。
- メコン河上流浚渫
メコン河上流浚渫は、中国主導によって強力に推進されているプロジェクトです。中国雲南省、ラオス、タイ、ビルマ(ミャンマー)の四カ国上流域における河川交通を活発化する目的で、思茅(Simao)からラオスのルアンパバーンまで約886kmの距離にある早瀬・岩礁を爆破、浅瀬を浚渫し、大型商業船の航行を可能とするものです。しかし、早瀬の爆破によって流域住民の生活を支える魚の生態系が破壊されるなど、環境への影響が懸念されており、メコン河委員会(MRC)、タイの住民グループや国際NGOなどが、承認されたプロジェクトの環境アセスメント(EIA)のやり直し、住民参加、下流国との協議などを訴えています。
調査を終了した中国雲南省の開発事業
- 昆明市上水道整備
昆明市上水道整備事業は、中国雲南省の昆明(Kunming)市における水不足を解消するため、掌鳩河(Zhangjiu river)上流に雲龍(Yunlong)ダムを建設し、昆明市までの導水、浄水場、送配水施設を建設することにより、都市化に伴う水需要の増大に対応しようとするものです。上水道施設の建設には、日本のODA(国際協力銀行による209億300万円の円借款)が使用されました。雲龍ダム建設により移転が必要とされる住民の数は2002年末までに約12000人にのぼり、水没する村落は91と報告されています。さらに環境面では、雲龍ダムの下流において水質汚染が深刻であるという報告もされています。
- 怒江ダム開発
2003年8月に国家発展改革委員会により怒江(サルウィン河)における13の連続ダム建設が計画されました。13の連続ダムのうち9つが「三江併流」世界自然遺産に近接する怒江中下流に建設予定のため、環境保護の立場から激しい抗議が国内外で起こり、2004年2月、温家宝首相によってダム計画の暫定的中止が命じられました。2004年11月、事業者により4つにスケールダウンした計画が提出されましたが、現在も事業の正式許可はおりていません。しかし、現地ではすでにダム建設のための測量、道路建設、開削作業が進められており、深刻な地滑りなどが発生しています。