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ベトナムの開発問題
ベトナムでは、開発に伴う住民の立ち退き、ダム開発、洪水、植林などが重要なイシューです。ベトナム政府は水力発電ダムを次々に建設しており、それによる立ち退き問題が深刻化しています。メコン河支流セサン川の開発がカンボジアにもたらしている環境・社会被害も大きな問題です。メコン河開発は原点をたどると、洪水と塩水遡上を防ぐ水調整という目的がありました。しかし、洪水は肥沃な土壌をメコンデルタにもたらし、塩水と淡水が混じりあう汽水域という自然環境は、地域の漁業資源を豊かに保ってきた側面を持っています。そのため、水量を変える恐れのあるメコン河上流でのダム開発は、ベトナムにとって大きな懸念事項です。一方、工業部門の発達で不足する電力から、ベトナム政府は原子力発電の導入を検討し日本も関与していましたが、経済性を理由に計画は頓挫しています。しかし、その代わりに地球温暖化を促進させる石炭火力発電所の建設が増加しています。
メコン・ウォッチが着目しているベトナムの開発事業
- アーヴォン水力発電ダム
アーヴォン水力発電ダム事業は、希少動物も生息する山岳森林地帯のベトナム中部クアンナム省で進められています。環境アセスメント承認の1年も前に着工していること、移転住民の生活環境・生活保障の劣悪さ、自然環境調査の不備など多くの問題を抱えています。国際協力銀行(JBIC)は本事業への融資を前向きに検討してきましたが、実施機関であるベトナム電力公社(EVN)の融資取り下げの依頼を理由に断念しています。これに関して、実際はJBIC自身が自然・社会環境面でのリスクの大きさから、融資を取りやめたのではとみられています。
- セサン・スレポック・セコン川流域ダム開発
ベトナムとカンボジアを流れるメコン河の支流セサン川流域では、24のダム建設に関する調査が終了しています。既にベトナム側でヤリ滝ダムが建設されましたが、ダムの運転に伴い川の水量が大きく変動するため、農耕地での洪水被害、水質悪化、漁業被害といった深刻な影響を下流のカンボジアで発生させています。しかし、被害に対する補償や再発防止策が整わないまま、ベトナム政府(ベトナム電力公社)はセサン川に次々とダム建設を進めています。政治的にベトナム政府と関係が深いカンボジア政府は被害住民を積極的に救済しようとはしません。このベトナム電力公社に多額の円借款ODAを供与している日本政府は、ベトナム政府のガバナンス改善に配慮した支援を行う必要があります。
- セサン3水力発電事業
セサン3ダムは、セサン川、ヤリ滝ダムから約15キロ下流にある260メガワット(MW)の発電能力を持つ水力発電です。1993年に建設が開始されたヤリ滝ダムによる被害が次々と出ているにも関わらず、ダム建設が進められ、2006年に操業を開始しました。ヤリ滝ダムの問題軽減やカンボジア流域の住民に対する補償支払いはいまだ行われていません
- セサン4水力発電事業
セサン4ダムは、セサン川ベトナム領域のベトナム中部高原地域、カンボジア国境から6キロ、セサン3ダムから約32キロ下流にある、発電膂力360メガワットの水力発電ダムです。
- スレポック4A水力プロジェクト
スレポック4Aダムは、ベトナムとカンボジアの国境付近、ベトナムのダクラク省に建設が計画されている、発電能力64メガワットの水力発電ダムです。
- ベトナムの原発開発計画と日本の原発輸出
ベトナム政府は2010年6月、2030年までに原子力発電所を8カ所、計14基(計1500万〜1600万キロワット)建設稼働するとした原発開発方針を承認しています。
同国国会が承認済みの投資計画では、ニントゥアン省の2カ所に2基ずつ、計4基(計400万キロワット)が建設予定となっています。同国初の原発となる予定のフォック・ディン地区の2基はロシアへの発注が決まり、残るビンハイ地区の2基は同年10月31日の日越首脳会談で日本へ発注されることが決まりました。日本政府はパッケージインフラ輸出の一環として、ベトナムへの原発輸出を強力に推進しています。(2016年11月22日、ベトナム議会が原発計画の白紙化を決定)
- ベトナム石炭火力発電事業
工業化等に伴い、電力消費が伸びているベトナムでは、水力・火力・再生エネルギーによる新規の発電事業が多数計画されています。火力のうち、特に石炭火力発電については大量の温室効果ガスを排出するため、世界で自然エネルギーへの転換が図られています。しかし、ベトナムではその流れに逆行し、石炭火力発電事業が推進されています。そこには、日本の開発機関であるJICAや、公的金融機関であるJBIC、貿易保険を提供するNEXIが深く関与しています。
- ヤリ滝ダム
ヤリ滝ダムはメコン河下流域に建設された最初の大型ダムです。設備容量(発電能力)は720メガワット(MW)。高さが70メートルにも及ぶこのダムは、常時満水位(FOL)に面積が65平方キロの貯水池を有します。発電後の電気は、ベトナム南部のホーチミン市を中心とした工業地帯に供給されています。
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