ホーム > メコン・ウォッチの活動 > 現地での活動 > 調査研究報告:「はかる」ことがくらしに与える影響の研究
「はかる」ことが、アジアの農村で人々のくらしを脅かしているのではないか。
私たちは、メコン河流域の国々で住民と活動する中で、そんな疑問を抱きました。
身長を測る、満足度を量る、経済成長を計る・・・私たちはくらしの中のいろいろな場面で、何かを「はかり」、また誰かに「はかられ」ています。「はかる」ということは何かを比べたり評価したりする際に日常的に行っている作業で、必要性は論じても、それが及ぼす影響を深く考えることはほとんどありません。特に開発が行われる際、その便益についてさまざまなことが部外者によって「はかられる」ことになります。しかしその方法は、開発される側の住民生活を汲み取るものではなく、人々の生活を破壊してきた事例が数多く見られます。
しかし今までは、どのように生活を「はかる」のか、という方法論が研究されることがあっても、それが「はかられる」側のコミュニティに何をもたらすのか、という「機能」は問題にされてきませんでした。この研究では、「はかり」の「機能」に着目しながら、「はかる」ことが人々のくらしに与える影響を、メコン・ウォッチが活動の中で関わっている事例から考えてみよう、という試みです。取り上げた事例は、ラオス北部ウドムサイ県で行なわれた「土地・森林委譲事業(LFA)」と、タイ東北部ウボンラチャタニ県に建設されたパクムンダムの2つです。
調査内容は1冊のブックレットにまとめ出版しました。ブックレットは、以下のように、文献研究による「はかる」ことについての考察、2つの事例研究、そこから導かれた提言という4部で構成されています。
目次
刊行にあたって
第1章 開発と「はかる」
1.なぜ「はかる」なのか?
2.豊かさと貧しさを「はかる」
3.「はかる」ことと「はからない」こと
4.「はかり」をめぐる対立軸
5.「はかる」ことと統治
6.NGOからの知的挑戦
第2章 森と農地を分断する「はかり」
〜ラオスの焼畑民のくらしと土地・森林委譲事業〜
1.はじめに
2.焼畑民の土地・森林利用と「はかり」
3.森と土地を管理するための「はかり」〜土地・森林委譲事業〜
4.森と農地が分けられるとき
5.押し付けられた「はかり」への反応
6.新たな「はかり」の使い方
7.まとめ
第3章 開発が「はかる」ものと「はからない」もの
〜タイ・パクムンダム〜
1.はじめに:本稿の目的
2. パクムンダム問題小史
3.パクムンダム建設前後の魚をめぐる「はかり」
4.漁業補償をめぐる「はかり」
5.ダムの水門開放をめぐる「はかり」
6.NGOと住民の「はかり」:「住民による調査」
7.まとめ
第4章 「はかる」ことがくらしに与える影響
1.「はかる」ことがくらしに与える影響
2.「はかる」こと、「はからない」ことの機能
3.「はかる」ことに関わる人たちへ:研究者とNGOへの提言
4.結び
PDFファイルでここからダウンロードできます。
※本書は財団法人トヨタ財団の2006年度研究助成事業として発行いたしました。