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ナムニアップ1ダム
サイソンブン県ホム郡の影響村の様子(2012年7月撮影)。
ダムが建設されれば、水田耕作・野菜栽培・焼畑耕作・牧畜等
で生計を立てているモン族の住民は移転を余儀なくされる。
- プロジェクト概要
- ナムニアップダムは、関西電力が45%を出資する合弁会社が、ラオスの首都ビエンチャンから北東約150kmのボリカムサイ県ボリカン郡に計画している水力発電事業です。発電される290MW(メガワット)の電力のうち、90%以上は隣国タイに輸出される計画です。約4,000人が移転を強いられますが、長期的な生計回復のための計画は明らかにされていません。また、ダム建設による森林の水没、ダム下流のナムニアップ川の水生生物への環境影響、漁業被害や河岸の野菜畑の水没による社会影響が懸念されています。同事業は、アジア開発銀行(ADB)、日本国際協力銀行(JBIC)、民間金融機関等による協調融資事業。
ファクトシートはこちら(PDF)(2017.11.14)
- プロジェクト名
- ナムニアップ1水力発電事業(Nam Ngiep 1 Hydropower Project)
- 所在地
- ラオス中部・ボリカムサイ県およびサイソンブン県
- 実施機関
- ナムニアップ1電力会社(Nam Ngiep 1 Power Company)。関西電力の100%子会社であるケーピック・ネザーランド(KPN)社が45%、タイ発電公社(EGAT)の子会社であるEGATインターナショナル(EGATi)社が30%、ラオス政府全額出資の投資法人であるラオ・ホールディング・ステート・エンタープライズ(LHSE)社が25%を出資して設立された。
- 資金供与
- 国際協力事業団(現国際協力機構=JICA)が実施可能性調査を実施。JBIC、ADB、民間金融機関の協調融資で、協調融資総額は6億4,300万ドル相当。うち、JBICはラオスにおける水力発電プロジェクトに対する初のプロジェクトファイナンスとして、2億ドルを限度とする融資を供与。ADBは1億4,400万ドル(約144億円) の民間セクター融資を供与。
- 状況
- 関西電力のプレスリリース(2013年8月27日)によれば、2014年1月着工(予定)、2019年1月運転開始(予定)とされており、実施企業のウェブサイトによれば、建設中の事業である(2014年5月現在)。
ナムニアップ1水力発電事業とは
ナムニアップ第1水力発電事業(NNHP1)は、メコン河の支流ナムニアップ川に高さ148メートル、貯水池面積67平方qのダムを建設し、290MWの電力を発電する事業である。発電所はラオスの首都ビエンチャンから北東約150kmのボリカムサイ県ボリカン郡に建設される。主発電所で発電される272MWはタイへ輸出、副発電所で発電される18MWはラオス国内に供給される。
実施企業が建設(Build)し、27年間操業(Operate)・所有(Own)したのち、ラオス政府に移譲(Transfer)するというBOOT方式の事業である。
サイソンブン県ホム郡の4村の全世帯、ボリカムサイ県ボリカン郡の1村の一部住民、合わせて約4,000人が移転を強いられるが、長期的な生計回復のための計画は明らかにされていない。また、ダム建設による森林の水没、ダム下流のナムニアップ川の水生生物への環境影響、漁業被害や河岸の野菜畑の水没による社会影響が懸念されている。
このような環境・社会影響が予想される事業であるにも関わらず、ダム開発、および電力輸出によるラオスの経済発展を前提に調査が進められ、ダム以外の代替案が検討されていない。これは、実施企業が「事業を実施しないという選択肢」を十分に検討することを要求しているADBのセーフガード政策に違反している疑いがある。
これまでの経過
- 1991年1月 ラオス政府とShlapac社(アメリカ)がダム計画に関する覚書に調印
- 1996年7月 Shlapac社との覚書破棄
- 1989−91年 Solgelerg Sogreah (フランス)が初期実施可能性調査を実施
- 1998年〜2000年 国際協力事業団(JICA)実施可能性調査第1フェーズ調査を実施
- 2001年〜2002年 国際協力事業団(JICA)実施可能性調査第2フェーズ調査を実施
- 2003年5月 ラオス政府が日本工営と調査実施に関する覚書に調印
- 2004年1月 関西電力と日本工営がJICA実施可能性調査レビューのコンセッション協定を締結
- 2005年5月 JICA実施可能性調査レビュー報告書完成
- 2006年4月 ラオス政府、関西電力、日本工営がダム建設に関する契約を締結、タイ電力公社(EGAT)と売電契約書を契約
- 2007年9月 関西電力、EGAT、Rojana Industrial Park Ltd.がコンソーシアム契約書を締結
- 2007年9月 Rojana Industrial Park Ltd.が撤退
- 2008年12月 EGATとの売電契約書期限切れ
- 2008年1月〜8月 補足現地調査実施
- 2013年4月12日 ナムニアップ1電力会社(Nam Ngiep 1 Power Company Limited)設立
- 2013年8月27日 ナムニアップ1電力会社、タイ電力公社、ラオス電力公社の間で買電契約が締結
- 2013年11月 大林組が建設工事を受注
- 2014年5月7日 ビエンチャンにて公聴会開催
- 2014年8月14日 ADBが1億4,400万ドルの民間セクター融資の供与を決定
- 2014年8月19日 JBICが2億ドル(JBIC分)を限度とする貸付契約を締結
メコン・ウォッチの提言活動
・ナムニアップ1電力会社に対し、インターナショナル・リバースと連名で、コンサルテーションのプロセスに関する質問状[PDF]を送付(2014.5.6)
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