ホーム > 追跡事業一覧 > ベトナム > セサン4水力発電事業
技術面の問題の例としては、以下の点があげられます。
・ダム事業の影響地域を特定していない。
「カンボジアに影響がある」としているが、なんの影響があるかの記述は少なく、実質的に、根拠となるデータも示せていない。
・セサン4ダムからの放水量を調整するために、下流にセサン4A調整池を建設するよう提案しているが、調整池の容量を、セサン4ダムの乾季の放水量のみに基づいて推計している。国際水準にのっとったEIAであれば、セサン4ダムだけではなく、さらに上流に位置するヤリ滝、セサン3、セサン3Aダムからの放水量も総計した上で検討すべきである。また、雨季の状態や、セサン川のそれぞれのダムが洪水対策として放水した状況下での調整池の管理・運営について検討した形跡がない。
・下流の水質について、ほとんど言及していない。
・下流の漁業や、魚以外の生物群に関する基礎情報が欠落している。漁業に関しては調査を実施していない。にもかかわらず、下流の漁業資源はダムによる環境の変化に順応できると結論付けている。 このEIA報告書案は、手続き面でも国際的慣行から逸脱しています。例えば、ベトナム国内メコン委員会の報告ではダム建設は2005年1月9日に始まっていますが、実施可能調査は2005年8月まで完成していません。つまり、セサン4ダムの建設は、実施可能性調査やEIAが完了し、当局によって承認を受ける前に始まっていたことになります。これは国際的慣行の違反であるばかりか、1993年のベトナム環境保護法第18条「EIA報告書の査定結果は、当該当局が事業を承認または事業実施を承認する根拠のひとつを形成する」にまで違反していると考えられます。
さらに、ベトナム政府がカンボジア政府にEIA報告書案を送付し意見を求めたのは、2005年8月のことです(意見送付の期限は同年12月とされた)。上述の通り、1月には建設が開始されており、カンボジア政府の意見が事業の内容を左右することはなかったことになります。