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サンボーダム
サンボーダムは、カンボジア国内を流れるメコン河本流で計画中の3つのダムの中で最下流域、クラチエ州上流のサンボー村近郊に位置し、完成すれば同国で最大のダムとなります。ダムの幅は18キロメートル、高さは56メートル、貯水面積は620平方キロメートルとなる予定です。設備容量(見込み)は2,600MWで、主にベトナムへの売電が目的です。ダム建設にともない、1,020世帯に影響が及び、19,034人の移住が必要と推定されています。
MRCの戦略的環境評価(SEA)によると、カンボジアがメコン河本流ダム建設(サンボーダムとストゥントレンダム)を推進する背景として、他のメコン流域諸国と比較して、同国では国内電力需要を満たすことのできる代替案が少ないことが理由として上がっています。水力発電に利用可能なメコン河支流が少ないことに加え、水力発電所を独自に建設するだけの経験がなく、外国企業の支援を必要としているからです。カンボジア政府は、海外からの投資を呼び込むためには、周辺国への売電ができるほどの発電所の規模が必要であると考えています。また、本ダムを含む水力発電所建設によって、輸入石油に全面的に依存するコストの高い発電施設の代替とすることも期待されています。ダムには3,398メートルもの長さの魚道が作られることになっていますが、詳細は不明です。
- プロジェクト名
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サンボー水力発電事業
- プロジェクト所在地
- カンボジア
クラチエ州サンボー村近郊
- 調査・実施主体
- 実現可能性調査:中国南方電網有限責任公司(China Southern Power Grid Company)の子会社である広西電力産業観測設計院(Guangxi Power Industry Survey and Design Institute)が2006年11月初旬にプレ実行可能性調査を実施。
実施企業:中国南方電網有限責任公司
- 事業費・供給先
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事業費:ダム本体49億4700万米ドル、送電線:3億1290万米ドル
補償:8033億米ドル(移転費用を含む。影響住民1万人で試算しているため額は更に増える見込み)、環境対策2124万米ドル。
- 状況
- 2006年10月31日、中国南方電網はカンボジアの鉱工業エネルギー省(Ministry of Industry, Mines and Energy)と覚書(MOU)を結び、プレ実行可能性調査(F/S)は提出済みです。
2007年の報道では、中国南方電網によるサンボーダム建設事業には、大小2種類の設計が存在することが指摘されています。1994年に暫定メコン委員会事務局(Mekong Secretariat、MRCの前身)によって実施された調査の報告書によると、大規模計画では、ダムの幅は10キロメートル、高さ54メートル、貯水面積880平方キロメートルで、出力は3,300MW(2010年には2,600MWに変更)が予定されていました。小規模計画では、貯水面積は6平方キロメートルで、予定出力は465MW。大規模計画が実行された場合、5,120名の住民の移住が必要となります。早ければ2020年に営業運転開始が見込まれていますが、計画通りに進むかは未定です。
・2007年、中国南方電網はすでに地質調査を行っているものの、地域住民はダム建設に関する情報をほとんど受けとっていない状態であると報じられています。2007年時点で、プロジェクトの詳細な環境社会影響調査はまだ行われていませんでした。カンボジアの工鉱業エネルギー省は、大規模な設計では環境影響があるが、小規模事業では影響は出ないと主張しています。
- 懸念される問題点
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・商業的に重要な種である回遊ナマズや世界最大の淡水エイなどを含む、メコン河の魚類と漁業に不可避的かつ甚大な影響をもたらす。
・国際自然保護連合(IUCN)が絶滅の懸念のある川イルカとその獲物の生息環境に重大な脅威をもたらすと指摘。
・建設によって、16,000ヘクタールが水没すると試算されており、生物多様性への大きな影響が懸念されている。
・サンボーダムの建設予定地はメコン河流域全体で最も生物多様性に富んだ地域を水没させることになる。
・サンボーダムの建設によって、メコン河に生息する回遊魚にとって、セサン・セコン・スレポックという流域最大の支流域への回遊ルート(特に、セコン川へのルート)を遮ることになる。
・ダム下流域では、建設により日々の水流パターンが変化し大量の堆積物がせき止められ、下流域の氾濫原での沈泥化が進まなくなるなど、水生生物の生態系に大きな影響を及ぼすと考えられている。
・氾濫原の回遊魚のメコン流域へのアクセスのうち、81%を遮断すると考えられている。
・ダム建設は食糧安全保障を脅かし、地域の貧困を悪化させる可能性がある。ストゥントレン州と並んで同国で最も貧困率の高いクラチエ州住民へ大きな影響があると懸念される。
・多くの漁場が失われ、貧困層の生活の糧を奪うことになる。
<関連メールニュース>
<関連情報>
- 大澤香織訳「カンボジア・サンボーダム」、フォーラムMekong Vol.9 No.1
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Mekong River Commission (2010) Strategic Environmental Assessment Final Report.
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Mekong Secretariat (1994) Mekong Mainstream Run-Of-River Hydropower. Executive Summary. Compagnie Nationale du Rhône: Lyon, France.
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Lawrence, S., and C. Middleton (1 June 2007) Mainstream Dams Threaten the Mother of all Rivers. International Rivers Network.