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バッタンボン駅舎(2010年11月)
ADBとオーストラリア政府などが協力して、カンボジア政府による国有鉄道復興を経済支援する事業。現存する鉄道は、クメールルージュ時代の破壊とその後の放置によって荒廃しているため、これを復興し、河川・道路交通網とも連携させることでカンボジア国内の交通制度を整備するとともに、大メコン圏(GMS)の地域統合を進める。また、この鉄道路線は、シンガポール−昆明間を結ぶ鉄道網の一部ともなる。
事業では、カンボジア・タイ国境の町ポイペト−プノンペン間約350キロ(うち48キロは復興済)の北部路線(49駅)およびシアヌークビル港−サムロン間約240キロの南部路線(24駅)の復興に加えて、ダンカイ(Dankai)郡サムロン(Samrong)・カカブ(Kakab)両集合村での貨物施設などの新設約98ヘクタール、プノンペン港への支線約9キロなどの関連施設の建設・復興も計画されている(「事業地図」を参照。)
バッタンボン駅 構内線路沿いが人びとの生活基盤に
なっている(2010年11月)
2005年:ADB、日本特別基金による技術援助を決定
2006年:カンボジア政府とADB、住民移転計画を承認
12月13日:ADB、融資を承認
2009年12月15日:ADB、改訂事業と追加融資を承認
2009年〜2010年:ADB、2006年の住民移転計画に基づき4件の改訂移転計画(北部路線、南部路線、プノンペン駅、ポイペト駅)を承認。住民移転の開始
2010年3月:現地NGO、ADBへの働きかけを本格化
5月:バッタンバン移転村付近の池で取水中の子ども2名が溺死
5月、7月:現地NGO、ADB担当者と協議
10月21日:現地NGO、ADB総裁・理事、オーストラリア政府に移転問題解決を要請する書簡を提出
11月:ADB、NGOの書簡に回答。ADB担当者、移転村を訪問しIRCなどとも協議。NGO、ADBの回答に反論
12月:ADB東南アジア局長ら、プノンペンでNGOと協議
バッタンボン駅 構内線路沿いが人びとの生活基盤に
なっている(2010年11月)
2011年4月:プノンペンの移転住民、カンボジア政府とADBに174件の苦情を提出
5月:ADB、移転ミッションを派遣、プノンペンでNGO・住民と協議(予定)
6月:ADB東南アジア局長ら、プノンペンでNGO・住民と協議(予定)
2013年:鉄道開通(予定)
カンボジア政府のDMS(Detailed Measurement Survey)による影響世帯数は4,029で、内訳は、鉄道路線COI(Corridor of Impact)内および駅構内が3,602世帯、サムロン施設建設238世帯(推計)、竹製貨車運営業者が189世帯である。詳細は以下の表の通り。
路線・駅名 | 完全移転 | 家屋の一部に影響、セットバック可 | 以外の建物・樹木に影響 | 借家人 | その他 | 影響世帯計 |
---|---|---|---|---|---|---|
北部路線(338キロ) | 310 | 144 | 711 | 0 | 0 | 1,165 |
南部路線(238キロ) | 52 | 125 | 29 | 0 | 0 | 206 |
ポイペト駅(6キロ) | 585 | 228 | 60 | 54 | 15 | 942 |
プノンペン駅(78キロ) | 169 | 570 | 502 | 13 | 35 | 1,289 |
影響世帯計 | 1,116 | 1,067 | 1,302 | 67 | 50 | 3,602 |
サムロン地区 | 土地・建物喪失 | COI内農地喪失 | 土地喪失 | 借家人・共同収穫者 | 影響世帯数(推計) |
---|---|---|---|---|---|
影響世帯数 | 75 | 53 | 169 | 8 | 238 |
*56家屋および6店舗が移転。農民5世帯が10%以上の農地を喪失 |
竹製貨車運営業者 | 影響大(主生計) | 影響小(副次的生計) | 影響世帯数 |
---|---|---|---|
影響世帯数 | 105 | 84 | 189 |
(出典:ADB. Rehabilitation of the Railway in Cambodia Project: Fast Facts)
バッタンボン駅周辺から移転地に移った住民たち。
水や電気の整備は
終わっていない(2010年11月)
移転先に水などのライフラインが未整備なまま住民が移転させられている。補償額を算定するDMSの算定基準と実施方法について多くの住民が不備を指摘している。住民から、補償の受け取りや移転を強要されているとの報告が絶えない。住民移転が始まっているにもかかわらず、生計回復策を立案・実施するために必要なベースライン調査が実施されていない。移転住民・NGOが文書や協議を通して問題点を指摘し、ADBやオーストラリア政府が改善を公言しているにもかかわらず、実際の問題解決は遅々として進まない。
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*本サイトの写真は特に断りがない限りすべてメコン・ウォッチの撮影