クルンテープ・トゥラキット紙
2001年12月10日
NGO, Wild Life Fund, Thailandのハンナロン・ヤオワルート氏によると、バンパコンダムに異例の許可が出たのは、政治家と灌漑局の高級官僚のつながりが深く関連しているためだという。
このダムの実現可能性調査は1989年、日本のJICAによって行われている。その後、1992年、灌漑局はカセサート大学に環境影響調査を依頼した。この調査では、現在実際に起きている岸の崩落と水の汚濁の問題が指摘されていた。この頃(注:プロジェクトを推進した)ルンルアン・チュラチャート氏が灌漑局副局長で、技術部門の責任者であった。その後、同氏は局長になっており、現在は国家水資源委員会と水法草案起草委員会に籍を置き、農業大臣の顧問でもある。また、先の選挙ではタイラックタイ(タイ愛国党)のパーティリスト(注:比例代表と同じようなシステム)の97番目に入っていた。
一方のチューチープ・ハーンサワット氏はプロジェクト実施当時、チャートタイ党に籍を置き、農業・協同組合省の大臣であったが、現在はタイ愛国党に移籍している。
ハンナロン氏によると「NGOはルンルアン顧問の行動を監視しているが、その中で彼が政治家・建築会社・EIAを請け負うコンサルタント企業と非常に親密な関係があることが分かった」と記者に語っている。
影響地域が地盤のタイ愛国党のウティポン・チャイセーン下院議員は、「この何の役に立たなかったダムの問題を前から取り上げているが、誰も責任を取ろうとしない。このダムは何の役にも立たないどころか、塩害と貯水による停滞で発生した水質汚染で地域住民を苦しめている」。と語っている。また同議員によると、流域12ヶ所で大きな崩落が起き、寺・学校・民家、そして県知事公邸にまで被害が及んでいるという。
議員は、灌漑局が地質学に基づき地域の土壌を調査していないこと、そしてバンパコン川が他の河川と違い湾曲していることなどを考慮せずにダムを作ったと指摘している。また川には養豚場・エビの養殖田・水田などから有機物が大量に川に流れ込んでおり、流れを堰き止めることで水質汚染を引き起こしているという。議員は、灌漑局がどのような結論‐撤去するのか、水門を閉じるのか、水門を開いて記念碑として残すのか‐を出すのかを待っているという。
「以前、チャトゥロン・チャイセーン首相府付き大臣にこの問題を相談したが、大臣は、『作っても全く役に立たなかったダムなら、事業がどんな風に失敗したかWebサイトに載せて世界中に広めてしまえ』と言っていた」。とウティポン議員は語った。
(付随記事)
日本の関わり部分のみ訳出
1990年10月、JICAが三祐コンサルタンツに委託し、The feasibility study on the agricultural water development project of Bangpakong river basinというF/Sを行う。バンパコン川への海水の逆流を防ぐため、12の貯水池と一つのダムを作る計画が立案され、事業の最初の段階としてシーヤット用水貯水池とバンパコン灌漑ダムの建設が提案された。
1996年に灌漑局はイタリアン・タイ‐西松建設のジョイントベンチャーと建設契約を結ぶ。顧問会社は三祐コンサルタンツ、Panya consultants Co., Ltd、Thailand Sanyu Consultants(Thailand) Co., Ltd.で、1億3千万バーツで顧問契約がされている。ダムと事務所は1999年12月3日に完成、灌漑局に引き渡された。
**現在メコン・ウォッチではこの案件のモニタリングを行っておりません。関連情報をお持ちの方の情報提供をお待ちしております(最終更新日2001年12月)**