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タイ農業セクタープログラムローン(ASPL)は、アジア開発銀行(ADB)と国際協力銀行(JBIC)の協調融資です。プログラムローンとして、ADBによって融資に伴う条件が決められていること、国会の審議を経ずに大規模な金額が動くこと、水資源法の制定を通じた水使用料の徴収が検討されていることなどの問題が指摘されています。
1999年、タイ政府とアジア開発銀行(ADB)及び国際協力銀行(JBIC)の間で、それぞれ3億ドルずつの農業分野を対象とした融資契約が結ばれました。農業セクタープログラムローン(Agricultural Sector Program Loan : ASPL)と呼ばれるこの事業は、タイ経済の立て直しのために、農業セクターの包括的な改革を図ろうとするものです。融資条件(コンディショナリティ)として、様々な政策や法規制の改革・改正が借り手であるタイ政府に貸されていることが、このプログラムローンの特徴として挙げられます。
ASPLの融資条件の一つである灌漑用水の全面有料化は、零細農民からの非難を巻き起こしました。有料化によって、資金のあるものが水を優先的に使えるようになり、零細農民はより厳しい生活を迫られるという理由です。2000年5月にチェンマイで開かれた第33回ADB総会でも、全国各地の農民が集結して、この融資条件の撤廃を求めていました。
ASPLのパイロットプロジェクトの1つが、北タイ・チェンライ県を流れるラオ川の灌漑整備事業です。王立灌漑局(Royal Irrigation Department :RID)が実施主体となり、ラオ川堰本体と幹線・視線水路の改修を行い、灌漑面積の拡大と灌漑効率の引き上げを目的としています。しかし、このプロジェクトの問題として、地域住民に対して費用回収についての説明が十分になされていないこと、プロジェクト決定過程における住民参加・情報公開がないこと、改修事業の必要性に疑問があること、灌漑面積の拡大やそれにともなう農業収入の増大といったプロジェクト効果の見積もりに疑問があることなどが指摘されています。