ホーム > 追跡事業一覧 > タイ > ヒンクルート石炭火力発電所 > ストップ!ヒンクルート&ボーノック第5号:最近の動き
2002.1.14
メコン・ウォッチ&地球の友ジャパン
日本の企業と政府機関が、現地の議会や地域住民を無視して進めているタイの石炭火力発電所計画を止めるため、皆さんの力を貸して下さい!
タイ政府が、小泉首相のタイ訪問と同じ1月11日に、プラチュアップキリカン県の2つの石炭火力発電所計画への態度を明確にする予定だったことから、この数日間、同計画をめぐって様々な動きがありました。以下はメコン・ウォッチ協力者の土井利幸さん(ウボン大学教員)からのまとめです。「翻訳参照」と書かれている部分につきましては、1つずつ配信させて頂きます。まずは、以下の報告で、全体的な流れをお伝え致します。
1月7日、ヂャトゥロン国務大臣が記者会見を開き、タイ発電公社(EGAT)と発電所の事業者との間で結ばれた契約が政府側に不当に不利な内容になっているとして調査に乗りだしました。折りもおり、高速道路建設の遅れをめぐって、ドイツ企業が半分以上を出資しているタイの合弁企業から多大な補償金を求められた件が社会問題化しており、世論は「不利な契約」に敏感に反応し、複数のタイ字紙が多くの紙面を割いて連日この問題を取り上げるようになりました。テレビでも経済ニュースのコーナーで取り扱われるなど、最近にはまれなほどの注目を集めています。
これまで上院の環境委員会、住民参加委員会、民営化委員会などが環境に対する悪影響や住民参加の欠如などの理由でそれぞれ火発計画に対する反対の立場を表明し、電気料金の値上げを懸念する経済界からも計画に疑問の声が上がっていましたが、今度は不当な契約の問題をきっかけに学生たちからも声が上がりました(翻訳参照)。今日(13日)はさらにタイ観光公社が、火発建設が建設予定地付近のエコ・ツアーに打撃を与えるとの理由で懸念を表明していると報じられています。
これらの動きを見ていると、タイ社会からの要請を受けて発電所建設に協力しているかのように宣伝している日本企業のレトリックがいかに空疎なものかがよく分かります。
11日、政府は国家エネルギー政策委員会の会合を開き、プラチュアップ火発計画に対して建設地変更の提案を出しました(翻訳参照)。計画の根本的見直しではなく、しかも同じ県内での建設ということで反対派からすれば受け入れがたいものでしょうが、計画見直しの動きが強まっていることは確かです。また、 タクシン首相は24日に現地を訪問して住民の声に耳をかたむけると公約しました。この期日の付近が政府の最終決定のあらたな期限です。
11日は小泉純一郎首相の訪タイの日でもありました。プラチュアップの住民はバスで首相府前に集結し、小泉首相がタクシン首相に火発推進を働きかけるのではないかと懸念を表明しました。メディアもこのあたりの動きを取り上げ、それまで計画に対する日本企業・政府の関与に関しては認識が非常に希薄だったのが、具体的な企業名を上げて報道しました(翻訳参照)。
プラチュアップ火発の問題が単に個別の発電所建設の是非を論じることだけでなく、タイの国家エネルギー政策、さらにメコン流域諸国全体のエネルギー・開発問題と関連していることも、同じ新聞報道でラオスのナム・トゥン第二ダムからの買電契約の調印(実際には延期)が報じられたことでいっそうはっきり見えるようになったかと思います。