ホーム > 追跡事業一覧 > タイ > ヒンクルート石炭火力発電所 > ストップ!ヒンクルート&ボーノック第6号:日タイ首脳会談では扱われず
2002.1.14
メコン・ウォッチ&地球の友ジャパン
日本の企業と政府機関が、現地の議会や地域住民を無視して進めているタイの石炭火力発電所計画を止めるため、皆さんの力を貸して下さい!
第5号の関連記事です。11日の小泉首相とタイのタクシン首相との首脳会談で、プラチュアップキリカン県の2つの石炭火力発電所計画が取り上げられるのではないかという懸念から、千人を超える反対派住民が抗議のために首相府前に集結しました(1月14日付け朝日新聞「世界の論調」下の写真参照)。以下、土井利幸さんの翻訳です。
『バンコク・ポスト』2002年1月12日
プラチュアップキリカン県の二つの火力発電所建設に反対する住民は、タクシン・チナワット首相の言葉を受けて、首相府前での抗議行動を終了した。
タクシン首相は、住民たちに向かって、昨日(1月11日)の小泉純一郎首相との会談の席で火力発電所の件を話題にしないと確約した。反対派住民たちは、小泉首相が建設計画推進の働きかけを行うのではないかと懸念していた。
「日本の首相とこの件を話し合うことはない。首脳というのは政策レベルの話し合いをするもので、個々の計画のこまごましたことは話し合わない」とタクシン首相は1200人の反対派住民の前で語った。
住民たちは木曜日(1月10日)の夜に17台のバスに分乗して到着し、小泉首相が建設計画に利害を持つ日本企業の後押しをしてタクシン首相に計画推進の働きかけをするのではないかと懸念を表明した。
事業費13億米ドルのヒンクルート発電所建設計画には、中部電力・豊田通商・トーメンが出資しており、事業費8億米ドルのボーノーク発電所建設計画の出資者には三井物産と電源開発が名前を連ねている。*
また両計画の事業者は、日本の国際協力銀行(JBIC)からの融資を求めている。タクシン首相は、また現地にあたるバンクルート市(テーサバーン)とボーノーク村(タンボン)を訪問し、地元住民と話し合う意向を表明した。
一方、ヂャトゥロン・チャイセン国務大臣(エネルギー問題担当)は、法律の専門家がタイ発電公社(EGAT)と事業者との間に交わされた買電契約書の内容を検討することになると語った。買電契約は1997年の経済危機の数ヶ月後に調印されたが、その後反対運動で建設計画に遅れが生じたため、完成期限を延期する目的で数度にわたって変更が加えられた。
ヂャトゥロン大臣は、契約を交わした当事者から同意を取り付けた上で契約内容の詳細を公表し、国家が損害をこうむるという国民の懸念をやわらげることを約束した。大臣は、また、当事者が同意しない場合、国民が1997年制定の情報公開法を利用して公開を求めることも可能だと語った。
また、Alongkorn Pollabutr議会エネルギー委員会副議長は、同委員会が建設計画に関連する55の契約をすべて精査してバンナ・チョンブリ高速道路補償問題での失態の二の舞にならないようにすると語った。**
調査によると、建設地の提供に遅れが生じた場合、国家が最低50億バーツの補償金を支払わなければならない、とAlongkorn副議長は述べた。同副議長は、政府は計画を推進するか否かの判断をそろそろ下す必要があり、これ以上計画が延期になれば国家が多大の違約金を払うことにもなりかねないと語った。
一方、ヂャトゥロン大臣は17日に調印が予定されていたラオスのナム・トゥン第二発電所からの買電契約書の調印を延期すると発表した。EGATは2006年から920メガワットの電気を購入する計画を立てた。ヂャトゥロン大臣によれば、調印の延期は技術的な問題を解決する必要性から生じたもので、電力消費が落ち込んでいるのに余分の電力を購入しているとの批判があるからではない。
*訳者注1:記事原文はMitsui Trading。実際には三井の関連会社であるMitsiamInternationalが1%出資している。
**訳者注2:高速道路建設をめぐり、タイ政府が期限通りに土地を提供しなかったことで、ドイツの企業が半分以上出資しているタイの合弁会社から補償金の支払いを求められている。