ホーム > 追跡事業一覧 > タイ > ヒンクルート石炭火力発電所 > ストップ!ヒンクルート&ボーノック第12号:凍結、しかし明言は避ける
2002.5.11
メコン・ウォッチ&地球の友ジャパン
日本の企業と政府機関が、現地の議会や地域住民を無視して進めているタイの石炭火力発電所計画を止めるため、皆さんの力を貸して下さい!
ヒンクルート発電所:トーメン、豊田通商、中部電力
ボーノーク発電所:電源開発
支援検討:特殊法人国際協力銀行(JBIC)、貿易保険(経済産業省)
プラチュアップキリカン県の2つの石炭火力発電所計画=ヒンクルート&ボーノークについて、タイ政府はタイ正月(4月13日)までに結論を出すと報道されています。それに先立ち、国家人権委員会は、これらのプロジェクトは、「新憲法下で規定されている現地住民の人権や参加の原則に違反して進められようとしている」という見解を示しました。
新憲法下で発足した独立委員会の1つである国家人権委員会が違憲という見解を出したことの意味は大きいです。そんなプロジェクトに日本企業がこぞって投資をし、あろうことか、国際協力銀行や日本貿易保険が融資や付保を検討していることは、情けないの一言につきます。
5月10日、タイ政府はプラチュアップキリカン県のヒンクルート、ボーノークの2つの石炭火力発電所計画について「凍結」という結論を出しました。
しかし、現地のラジオ報道などによりますと、「現時点では、タイは十分な電力があるので、2つの石炭火力発電所プロジェクトについては、タイ発電公社に対して投資企業と話し合うように求めた」という発表で、凍結や延期ということを具体的には述べていないようです。
つまり2つのプロジェクトは現状では必要ないが、今後投資企業が損害賠償訴訟を起こすかもしれないので、それ以上はっきりしたことは言えない、というのが現地NGO(TERRA)の分析です。4月30日までに財源を確保できなかったことや、被影響住民らの理解を得られなかったことは投資企業の非である(バンコクポスト5月11日)という根拠が有力と見られています。
特に前者については、投資企業側は、日本の国際協力銀行(JBIC)が融資を確約していると宣伝していましたが、JBICは谷博之参議院議員の質問に対して、3月29日、企業から融資の要請を受けていないと書面で回答しました。これがタイでも報道され、財源確保が虚偽であることが改めて明らかにされたわけです。
そうした背景はあるものの、5月11日付けのバンコクポスト紙は、「適正な予備電力水準は2007年までは続けられる」、「プロジェクトを中止した場合のコストは90億バーツだが、このまま続ければ170億バーツかかる」として、タクシン首相周辺は事実上プロジェクトを中止する腹を決めているのではないかという見通しを示しています。
2006年1月完成予定だったヒンクルート発電所計画はすでに51ヶ月遅れ、ボーノークは2005年4月完成予定がすでに36ヶ月遅れています。
バンコクポスト紙は、「もしタイ発電公社が既存の発電所の効率を改善すれば、2つの石炭火力発電所よりもずっと安く済む」という匿名の政府高官のコメントを載せた上で、「必要もないのに発電所を作れば、人々が重荷を背負わなければならない。・・・私たちはこれまであまり真剣に考えてこなかったが、もし1000メガワット分の電力消費を減らせれば、1000億バーツの建設コストを削減できるのだ」というタクシン首相の発言を引用しています。
本日(5月11日)、定例の週末のラジオ番組にタクシン首相が出ますので、そこで踏み込んだ説明があるかどうか、注目されています。