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JICA環境・社会配慮ガイドライン改定とメコン・ウォッチ

改定の背景

ケニアの水力発電ダムや北方領土支援をめぐる不祥事を背景に2002年3月に設置された外務省改革に関する「変える会」は、ODAの透明性と説明責任を果たすために外務省に行った提言の中で以下のように述べている。

『本年(2002年)4月1日、国際協力銀行(JBIC)が作成した「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」を踏まえ、無償資金協力の環境・社会配慮ガイドラインを策定する』

これに対して外務省は、2002年8月に行動計画を発表し、『JICAにおける「環境配慮ガイドライン」を改訂し、これに則り援助を行う』という方針を打ち出した。「変える会」が求めたのが、JBICがカバーしていない無償資金部分すべてだったのに対して、外務省はJICAに限定したのである。

改定委員会とメコン・ウォッチ

JICAはそれまでダムなどセクター別の環境ガイドラインを持ち、開発調査の事前調査に適用していた。これを抜本的に改定するため、JICAは2002年12月に外務省・経済産業省・国土交通省・農林水産省の担当課長、国際協力銀行(JBIC)の環境審査室課長、大学教員、コンサルタント、NGO、それにJICAからなる改定委員会立ち上げた。なお、改定委員会の議事録と提出された意見などはすべてJICAのホームページで公開されている。

最初のハードルは、議論の進め方である。JICAはわずか4回で議論を終わらせようと提案していた。メコン・ウォッチからはJBICの環境・社会配慮ガイドライン制定の経験からの意見書を改定委員会に提出し、十分な審議時間の確保、民主的な委員会の運営、当日参加者の発言権の確保などを主張した。

当初メコン・ウォッチは委員となっていなかった。NGOからの委員は、国際協力NGOセンター、関西NGO協議会、名古屋NGOセンターといった地域別のNGOネットワークを通じて推薦されたからである。最初の改定委員会で、複数の委員からJBICの環境・社会配慮ガイドライン制定プロセスに関わったメコン・ウォッチとFoE-Japanの参加が求められ、これに応じる形で委員会のメンバーに参加したという経緯である。

4回で終わるはずだった委員会は、結局2003年9月まで16回にわたって開催された。通常こうした委員会は、JICAが原案を出し、それに基づいて委員が意見を述べるという形式をとる。しかし、JBICの環境・社会配慮ガイドライン改定の際もそうだったが、メコン・ウォッチは、むしろJICAと同じタイミングで自らの提言を出し、同じ土俵で議論する方法をとり続けた。受け身になるのではなく、能動的に議論をリードしようと努めた。

問題事例の分析

改定委員会では、なぜJICAの環境・社会配慮ガイドラインを改定しなければならないのか、何が問題なのかを明確にするため、過去のJICA事業の事例研究から始まった。メコン・ウォッチからはバンパコンダム、ラムタコン揚水発電プロジェクト、コックインナン導水プロジェクト(以上、タイ)、ナムニアップ第1水力発電所(ラオス)、それにバルーチャン第2水力発電所改修計画(ビルマ)について問題分析を提出した。

議論すべき点

次に、改定委員会で審議するポイントを話し合った。これについてもNGOからの委員で事前に議論を行い具体的な提案を改定委員会に提出した。

特に、これまで外務省の専決と言われていた案件検討(要請)段階をガイドラインの対象とすること、社会配慮やガバナンスが著しく低い国での環境社会配慮の特性を十分議論すること、JICAの実施体制も議論の対象とすること、外務省などJICA事業の意思決定に関わる他のアクターへの提言も議論すること、などに留意した。

ガイドラインへの提言の中身

その後は『議論すべき点』にそって、毎回具体的な提案を委員会に提出した。

この段階で特に気にしたのは、JICAの責任範囲の明確化である。とかくJICAは、相手国政府やコンサルタントに任せきりになる。JICAの役割は「支援」だと曖昧な表現をし続けた。しかし、ガイドラインでは一連の援助の中で、JICAがやらなければならないことが何なのか、JICAの責任範囲を明確にすべきだと考えた。そのために、JICAの審査や意思決定プロセスについて、時間をかけて議論した。また、社会配慮の範囲、ガバナンスの低い国での環境社会配慮、情報公開や住民との協議などについては、特に時間をかけて議論した。

ガイドライン以外の提言

ガイドラインの内容と直接関係しないが重要だと思われる点について提言し、改定委員会で議論した。

その中で、環境・社会配慮ガイドラインだけではカバーしきれないテーマを含んだセーフガード政策の拡充、外務省の権限が大きい無償資金協力の意思決定に関わるガイドラインの策定、JETRO(日本貿易振興会)のフィージビリティ調査など各省ODAへのJICAガイドラインの適用、国際協力総合研修所を活用した環境社会配慮政策上の実務的な研究の推進、それに過去の案件に対する批判的な検証を求めた。

JICA案発表後

16回の改定委員会、十数回の自主的な勉強会、数回に及ぶ提言起草委員会をへて、2003年10月、独立行政法人化後のJICAに、改定委員会の提言を提出した。これを受けてJICAは環境・社会配慮ガイドライン案(以下、JICA案)を作成。改定委員会はフォローアップ委員会と名称を変え、JICA案が提言をどのように反映しているか(していないか)を公開の場で吟味して、意見を述べるという役割を担うことになった。

実際にJICA案は提言と比較して大きく異なっていた。相手国政府が実施する『対象プロジェクト』と、JICAが支援する『協力事業』という用語の使い方が不明確になったため、JICAの責任の所在がわかりにくくなったと言える。メコン・ウォッチでは2003年11月に14ページに及ぶコメントをフォローアップ委員会に提出して議論を求めた。

最終的には、ほとんどの部分で修正が行われ、提言の主旨が保たれる内容となった。

パブリックコメントとパブリックコンサルテーション

2003年12月からJICA案が公開され、2月6日までパブリックコメントが受けつけられた。同時に、全国4か所(東京、名古屋、大阪、北九州・沖縄合同)でのパブリックコンサルテーションが開催された。この間、被援助国にも意見を求め、タイ、中国、ホンジュラス、メキシコ、ガーナ、マラウイ、ブルガリア、キルギスなどからコメントを得た。日本でのコンサルテーションの出席者はのべ69名、コメントは27通だった。メコン・ウォッチからも、緊急時の対応、詳細設計調査の情報公開、無償資金協力の基本設計調査中の環境社会配慮、それに実施体制に関してコメントを提出した。

コメントを受けてJICAは修正案を作成し、フォローアップ委員会とホームページで公開した。この段階でJICAが行った修正に対して、フォローアップ委員会で議論となったが、その内容についてはJICAのホームページを参照して頂きたい。

2004年度からの機構改革と連携F/S

2004年3月にあるセミナーでJICA幹部が、2004年度以降、開発調査と技術協力をいっしょにして課題部という組織を作り、これまでのプロジェクト方式からプログラム・アプローチに変えていくと説明した。また、この幹部は、円借款の要請が出ている案件については、JBICと連携した『連携F/S(実施可能性調査)』を導入することを明かにした。

これに対してメコン・ウォッチでは、

とフォローアップ委員会とJICAに意見書を提出した。これに対してJICAは、

と回答し、この方針をJICA環境・社会配慮ガイドライン改定のホームページで公開することに合意した。

今後について

ここまで述べてきたように、1年3か月にわたるマラソン協議の結果、JICA環境・社会配慮ガイドラインは2004年4月1日に施行された。今後は、ガイドラインを適切に運用するための職員向け手引書の作成、審査諮問機関の委員や異議申立機関の審議役の公募・選考が行われる。そして、2004年度要請案件から、新しいガイドラインが適用されることになる。この環境・社会配慮ガイドラインが、不必要な援助や環境社会被害につながる援助をなくすことに寄与できるかどうかは、これからの運用にかかっている。

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